「前田」さんは方位に由来。稲作の盛んだった西日本でメジャーな名字です
前田(まえだ)
「前田」は方位に由来する名字です。文字通り、広い水田の中で手前の方にある田んぼ、或いはお城などの大きな建造物や、村の領主の屋敷の前に広がる田んぼ、という意味でしょう。こうした田んぼの所有者が前田さんで、全国にいろいろな由来の前田さんがいました。 この多くの前田さんの中で最も有名なのが、加賀百万石の藩主前田家です。 加賀前田家は尾張国荒子(現在の名古屋市)の出です。江戸時代になって書かれた公式資料では、菅原道真の子孫で美濃国前田(現在の岐阜県)に住んで前田氏を名乗ったと書かれていますが、実際には利家の父利昌より以前のことはよくわかっていません。 現在、「前田」という名字は鹿児島県で第4位の名字となっているのを筆頭に、沖縄も含めて全国32都道府県で上位100位に入るなど、全国に広がっています。 とくに古くから稲作の盛んだった西日本に多く、ほとんどの県で50位以内に入るとてもメジャーな名字となっています。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
家庭画報.com