「内向型の人」が備えている集中力は、情報処理に多くのエネルギーを使用するためだった
内向型の場合、情報・意味付け・計画・記憶・問題解決を扱う脳の領域を移動するため、移動領域も多くなります。意味や解釈を加えるには意識を自分の内側に集中させる必要もあります。内向型は外向型の経路よりも40%多くのエネルギーを使用するとの報告もあります。 内向型が集中力に優れているのは、自分の内側に意識を集中させやすい脳構造になっているからといえるのです。 ■なぜ静かな人は「驚異的な集中力」を発揮するのか?
内向型の人が外向型の人に比べて集中力が高いのは、脳の網様体賦活系の働きの違いによっても説明できます。 網様体賦活系は聞きなれない言葉だと思いますが、外部からの刺激を最初に処理して、脳に伝える部位です。大脳皮質の覚醒を引き起こしたり、脳内の情報を仕分けしたり、検索エンジンのような働きも担っています。 例えば、皆さんが何かを見たときに「これ、3年前にも見たことあるぞ」といったように思い出せるのは網様体賦活系が古い記憶を呼び起こしているからです。
また、赤いコートが欲しいなと思って街を歩いていると、赤いコートを着た人ばかり意識してしまうのも網様体賦活系の働きによるものです。 これまでの研究では、内向的か外向的かは網様体賦活系の個人差によって決まるとされています。内向的か外向的かは網様体賦活系によって引き起こされる大脳皮質の覚醒と制止によって説明できると理解されています。内向的な人は覚醒レベルが高く、外向的な人は制止レベルが高いと考えられています。
内向的な人のほうが刺激に対して敏感ですので、大脳皮質は少しの刺激でも過剰に覚醒しやすい構造になっています。そのため、過剰な興奮を避けるために刺激を可能な限り避ける傾向があります。 一方、外向的な人は刺激に対して鈍感です。大脳皮質の覚醒が遅かったり、覚醒状態になってもすぐに覚醒が収まったりします。ですから、通常の刺激では外向型はすぐに退屈して、満足できません。より強い刺激を求めて、活動的になります。
このように内向型の脳は刺激を抑える仕組みになっています。網様体賦活系が刺激を回避して、集中力を発揮できる環境を整えているのです。
大山 栄作 :精神科医