令和の野球部マネジャーは「雑用係」ではない 社会で生きるトライアル&エラーの青春
記者の前職は地方公務員の行政職。教育委員会に所属し、スポーツでまちを元気にすることを目的とした部署に所属していた。3年で辞めたが、仕事が嫌になったわけではなく、専門的にスポーツで人々に貢献できる仕事をしたいと思い、現職となった。 【写真あり】甲子園の銀傘がアルプスまで!28年に完成予定、拡張される銀傘の完成イメージ 記者になって5年目が終わろうとしているが、いまも行政時代の思いは不変。日本のスポーツを振興する文部科学省はスポーツ立国戦略の基本的な考えとして、「する人」、「観る人」、「支える(育てる)人」を重視している。日本で野球において「する」、「観る」は充実度が高い。「する」。全国各地に野球場があるし、情報化社会となったことで練習方法や技術論は格段に得やすくなった。「観る」。大学野球リーグや高校野球はネットでの配信が進んでおり、社会人野球も11月に行われた日本選手権がネット放送された。遠方でもスマホがあれば手軽に観戦できる。 記者として「支える(育てる)人」を支援したいと思っている。入社当初から大学野球の主務や高校野球のマネジャーたちの記事を書いてきた。選手たちには結果、指導者には選手の育成、生徒の人間的成長、チームの勝利といった追い求めるものがあり、メディアにも取り上げられやすい。一方で裏方で貢献するマネジャーらにスポットが当たることは極めて少ない。彼ら、彼女らの活躍はもっと、もっと、知られるべきと思った。 昨年からYouTubeにおいて、マネジャーの1日に密着する動画「マネジャー流」がスタート。記者とカメラマンを兼任する「記者カメ」として11本を撮影。東海大相模(神奈川)、水戸一(茨城)、古川学園(宮城)…。東北、関東の高校で取材を重ねた。 令和を生きるマネジャーたちは「雑用係」ではない。久慈(岩手)の高橋琴子マネジャー(2年)はパソコンを駆使し、選手が受けた講習を資料化し、選手の意欲向上を目指してポスターも作成している。中央学院(千葉)のマネジャーはブログを運営し、甲子園に出場するチームの「いま」を発信していた。3年生が引退した今夏から選手が3人となった稲毛(千葉)の西沢史桜(しおん)マネジャー(2年)。中学時代、女子野球の千葉代表選手だった経験を生かし、選手のキャッチボールの相手や打撃練習で守備を務める。選手たちの動きに目を光らせ「一歩目が遅いよ!」と見逃さない。 マネジャーたちは野球部という組織に貢献できる方法を考え、実行し、ときには失敗し、改善に励む。その日々は社会に出た際に必ず生きるはずだ。アマチュア野球記者として会社に求めれるのは、主役である選手たちの記事。ただ、この裏テーマは25年も胸に秘め、カメラを止めない。(記者コラム・柳内 遼平)