なぜ東京五輪代表最終選考レースのびわ湖毎日は日本記録更新ペースを設定せず多くの招待選手は”打倒大迫”をギブアップしてしまったのか?
もう一人の8分台保持者(2017年ゴールドコーストの2時間8分59秒)の野口拓也(31、コニカミノルタ)も日本記録更新は「現実的ではない」と真面目に語った。 「具体的なタイムは設定していない。ここ最近は自分自身のマラソンをうまく走れていないので、課題克服を第一に順位も考えていない。僕自身、東京五輪を目指してやってきているが、現実的ではないと正直思っている。ただ、競技者でやっている以上、常に世界を見て自分がどの位置にいるかを考えていく」 5人の会見参加選手の中で、唯一「東京五輪」と口に出したのが、この野口だった。 そしてMGC7位で最年少の国内招待選手である鈴木だけが、夢のある話をした。 「先頭集団について優勝争いするのが目標。レース展開によると思うが、そこのタイム(日本記録)を1秒でも縮められるような走りをしたい」 神奈川大時代、箱根駅伝の花の2区で区間賞。2017年のユニバーシアードのハーフマラソンでは銅メダルを獲得している。マラソンの自己ベストは、2018年東京の2時間10分21秒だが、その伸びシロへの期待はある。びわ湖に向けて、米国アルバカーキで高地トレを積み「いい準備ができた」という。 大迫のレースを見てモチベーションも上がった。 「最初から最後まで見たが鳥肌が立った。びわ湖毎日で鳥肌の立つレースができるかどうかわからないが刺激的なレースができたらなあと思う」 しかも、富士通の先輩、中村匠吾(27)が、MGCで先に東京五輪代表を決めており「特にアドバイスはなかったが、僕も続いて結果を出せるように頑張りたい」という。 新型コロナウイルスの影響で沿道の応援に自粛を要請する異例のレースとなるが「大会ができることに感謝して、日本国民のみなさんが元気になれるように積極的なレースをして大会を盛り上げたい」とも約束した。鈴木は序盤からペースメーカーにつき勝負をかける決意なのだろう。 だが、残念なことに、そのペースメーカーの時間設定が、日本記録更新ペースではなく、「1キロ3分00秒」、2時間6分35秒ゴールに置かれることが明らかになった。東京ではペースメーカーが2パターン用意され、ファーストが「1キロ2分55~56秒」(2時間3分04秒~3分46秒ゴール)、セカンドが「1キロ2分58秒」(2時間5分10秒ゴール)に設定されていたが、今回のびわ湖は、ワンペースの「1キロ3分00秒」で、3人の外国人選手が30キロ、2人の日本選手が20キロまで引っ張る。