なぜ東京五輪代表最終選考レースのびわ湖毎日は日本記録更新ペースを設定せず多くの招待選手は”打倒大迫”をギブアップしてしまったのか?
東京五輪マラソン代表を決める最終選考レース、MGCファイナルチャレンジを兼ねたびわ湖毎日マラソン(8日・皇子山陸上競技場発着)の招待選手会見が6日、びわ湖大津プリンスホテルで行われ内外の招待選手9人が出席した。昨年9月のMGCで代表2枠が決定、残る1枠をゲットするには大迫傑(28、ナイキ)が東京マラソンで出した2時間5分29秒の日本記録を更新し日本人トップにならねばならないが、「そのタイムを1秒でも縮めたい」と語ったのは、MGC7位の鈴木健吾(24、富士通)一人だけ。他の4人は、現実的な目標タイムを口にして、事実上、日本記録更新はギブアップ。またレースのペースも天候予想から2時間6分35秒ゴールに設定され日本記録更新は難しくなった。
川内は「東京五輪は考えていない」
マラソンに奇跡はないのだろうか。それとも大迫が東京で叩き出した感動のタイムがあまりに偉大すぎたのか。会見には、最後の1枚の東京五輪切符を争う日本人招待選手が5人出席したが、彼らが口にしたのは、あまりにリアルな数字だった。 人気ランナーの川内優輝(33、あいおいニッセイ同和損保)がまず口火を切った。 「僕としてはなんとかサブ10に戻したい。東京マラソンを見てサブ10にどれくらいの価値があるのかを疑問に思う方もいらっしゃると思うが、僕は、昨年のびわ湖以来、サブ10ができていない。そこを達成しないことには、次に進んでいくことができない。最低、福岡のシーズンベスト(2時間12分50秒)を更新しなければならない」 サブ10とは、2時間10分を切ること。自己ベストは、7年前に出した2時間8分14秒で、疲弊したドーハの世界陸上以降、不調に陥り、昨年のびわ湖の2時間9分21秒以来、2時間12分さえ切れていない。そういう川内にすれば、無理もない目標タイム。そして、そもそも川内は「東京五輪は考えていない」という。。 続く荻野皓平(30、富士通)も、「目標タイムは当日のペースの流れによるのであまり考えていない。日本記録というのは、現時点での自分の力では見えていないタイム。今大会は勝負をテーマに走りたい」と本音を吐露。マラソン経験が豊富だが、2018年の東京で出した2時間9分36秒が自己ベストでMGCは途中棄権した。 MGCで大迫に続く4位に食い込み、今大会の優勝候補の一人、大塚祥平(25、九電工)も「当日のコンディションがよければ7分台が目標」と言った。 「現実的に、5分台を考えて走るのではなく先頭集団についていった結果、いいタイムが出ればいい」 駒沢大時代に箱根駅伝で”山の神”として5区で区間賞を取り注目を浴びたが、まだマラソンの自己ベストは2018年別府大分の2時間10分12秒。東京での大迫の走りだけでなく、6分台2人、7分台7人も出た高速レースに「大迫さんだったら、あれくらいのタイムを出しても驚くことはない。しっかりと試合に調子を合わせてきたのはさすが。他の選手もタイムを出したので刺激になった。自分も出せるんじゃないかという気になれた」と、刺激を受けたが、自分の実力から冷静に判断した目標数値を掲げた。