「食品ロス」毎日、国民1人当たりおにぎり1個捨てている計算…年472万t「もったいない」超えるレベル
家庭などで余っている食品を持ち寄る「フードドライブ」と呼ばれる活動だ。群馬県と「イオン」(千葉市)が共同で設置し、県内外の約50人が持ち寄った60キロ・グラムの食品はフードバンクを通じて市内の子ども食堂などに分配された。
栃木県那須塩原市から駆け付けた会社社長秋元信彦さん(45)は自社で製造するパンの缶詰を約150個寄付。「限りある食品を有効に活用することは食料を大事にする意識につながり、自給率向上にも関係するはずだ」と強調した。
イオン環境・社会貢献部の伴井明子部長(53)は「世界的な人口増加により食糧難の時代は見えているが、日本では自給率が低いのに食品ロスが多いという現状があり、危機感がある。小売店の責任として、食料を少しでも大事にするように消費者の行動原理を変えたい」と意気込む。
「消費者の責任ある行動が食料安全保障に関わってくる」
食品ロス削減に向けた動きはほかにもある。一部の事業者の間では、年月日で表示している賞味期限を年月にするなど商習慣の見直しが進む。政府も、すぐに食べる場合は、陳列棚の手前に並ぶ販売期限が迫った商品を買う「てまえどり」を呼びかけている。
一方、課題も山積している。推進法では消費者に食品ロス削減を自主的に取り組むよう求めてはいるが、食品ロスに詳しいジャーナリストの井出留美さんによると、イタリアのように余剰食品を寄付した際の優遇措置や、フランスのように食品の廃棄に関する罰則はない。生ごみの8割を占める水分を切ってから捨てる意識も国内では希薄とされる。
推進法の作成にも協力した井出さんは「『食べきれる分だけ買う』『ごみを少なくする』といった消費者の責任ある行動が、食料の大切さを考えることにつながり、日本全体の食料安全保障に関わってくる」と指摘する。
食料自給率が38%(カロリーベース)と、海外に多くの食べ物を依存し、脆弱な国となっている日本。紛争や大災害、気候変動などで、深刻な食料危機が発生する可能性は否定できない。自給率を上げ、食料安保を強化していくには、政府の政策や生産者の努力だけではなく、私たち一人一人がどう考え行動していくかにもかかっている。