「食品ロス」毎日、国民1人当たりおにぎり1個捨てている計算…年472万t「もったいない」超えるレベル
11月中旬、「福岡バイオフードリサイクル」(福岡市)の工場。廃棄物をためる設備「ピット」は、ごみ袋に詰め込まれた手つかずの弁当や野菜、残飯などで埋め尽くされていた。まだ食べられるのに捨てられた「食品ロス」の品も含まれているという。 【動画】食品ロス削減への取り組み
食品廃棄物をクレーンでつかみ…バイオガス発電でリサイクル
この工場では福岡市内のコンビニエンスストアやスーパー、ホテル、飲食店、病院などから出た食品廃棄物を受け入れている。天井付近からつるされたクレーンが廃棄物をつかみ取ると、破砕機がある設備に運んでいく。
発酵させて発生したメタンガスで発電機を動かす「バイオガス発電」で電力を作り出し、ビルなどに供給する。年間発電量は一般家庭約2700世帯分の年間使用量に匹敵する約1万2000メガ・ワット時だ。
同社はプラント大手「JFEエンジニアリング」(東京)のグループ会社が設立し、工場は今年5月から本格稼働した。滝本秀樹工場長(57)は「たくさんの食品をリサイクルできる。再利用で無駄を減らせる」と話した。
食品ロス半減、8年前倒しで達成したが…
農林水産、環境両省によると、日本の食品ロスは2022年度の推計で、食品製造業や外食産業などの事業系と家庭系が各236万トンで計472万トンに上る。国連世界食糧計画による23年の世界の食料支援量約370万トンを上回る規模だ。
政府は国内の食品ロスの削減を目指しており、00年度の980万トンから、489万トンに半減させる目標は8年前倒しで達成した。政府は今年度内に新たな目標を定める方針だ。
ただ、現状でも、毎日国民1人当たり、おにぎり1個を捨てている計算で、消費者庁によると、年間4兆円の経済損失が発生している。同庁食品ロス削減推進室の田中誠室長は「もったいないというレベルを超えている。もはや大量生産、大量消費の飽食の時代ではなく、持続可能な生産と消費形態に変わる必要がある」と語る。
「自給率低いのに食品ロス多い」現状に危機感
19年施行の「食品ロス削減推進法」で、削減の日と定められている10月30日に群馬県高崎市で開かれた「食品ロス削減全国大会」。会場に設けられた箱は、そうめんやスナック菓子、カレーのルー、お茶、水など、多くの来場者が持参した賞味期限内の食品でいっぱいになっていた。