大谷翔平、メジャー史上初の「50-50」なるか……ドジャース「一塁コーチ」が快挙達成のキーマンと囁かれる理由
史上最速の「40-40」
ドジャースの大谷翔平(30)が8月23日(日本時間24日)のレイズ戦で、メジャーリーグ史上6人目、日本人では初となる「40-40(40本塁打&40盗塁)」を達成。翌日には41号を放つなど、大活躍だ。 【写真を見る】まるでセレブ! ゴージャスな美人揃いの「ドジャース奥さん会」
大谷の本塁打は年間50本ペースに乗っており、「50-50の達成もあるのではないか」と期待されている。 「米国ファンも過去5人しか達成されていない『40-40』の価値は分かっていますが、『45-45』はもちろん、より高い『50-50』のハードルを大谷に期待してしまうのは、『40-40』が史上最速となったからです。残り試合数を見て、『50-50』もあり得ると、誰もが思っている」(米国人ライター) 過去5人の「40-40」達成者だが、昨年、ブレーブスのロナルド・アクーニャJr.(26)は152試合目。ナショナルズ時代の06年にアルフォンソ・ソリアーノ(48)が達成したときも147試合で、ホセ・カンセコ、アレックス・ロドリゲス、バリー・ボンズも150試合を過ぎていた。大谷は126試合目だ。ファンならずとも、大記録達成は間違いないと思ってしまうのも無理はない。 ただ、大方の米メディアは「50本塁打はともかく、50盗塁は厳しい」とも予想していた。本塁打を打てば、盗塁の機会はなくなる。しかし、ドジャースのクラブハウスでの様子を取材してみると、「50盗塁」が達成される可能性は極めて高いことが分かった。
カギを握る一塁コーチ
「大谷の盗塁の指南役は、一塁コーチャーのクレイトン・マッカローコーチ(44)です」(現地記者) 大谷が出塁すると、お互いのヘルメットを軽くぶつけ合い、言葉を交わす。マッカローコーチが恥ずかしそうな表情で大谷に応えるシーンは日本でも紹介されていたが、両者は強い信頼関係で結ばれている。 「試合前のクラブハウスに行くと、マッカローコーチがパソコンを睨んでいます。対戦相手の投手の映像を何度も繰り返し、見ているんです。そこで気づいた点をメモに取り、大谷のところに行ってパソコンで映像を見せながら色々と説明しています」(前出・同) マッカローコーチは、大谷のように「行けると思ったら盗塁しても良い」と指示されている選手、あるいは単独スチールのサインが出る可能性のあるスピードプレーヤーにも同様に話し掛けているという。その中で、もっとも長い時間を掛けているのはやはり大谷。しかも、同コーチに質問するだけでなく、自身から提案をしているのは大谷だけだという。 「二人のやり取りは開幕当初から見られました。雰囲気はとても良かったと思います」(前出・同) シーズン序盤、開放されたクラブハウスで大谷とマッカローコーチが話し込むシーンを多くの米メディアが目の当たりにしている。同コーチとの試合前の映像チェックの積み重ねが、21年の26盗塁という自己最高記録を更新させた。 メジャーリーグではさまざまなデータ解析が進められており、マッカローコーチとの映像チェックは“アナログな感”もしないではない。実際、対戦する投手の走者を置いた場面での配球傾向、ウィニングショットで投げる変化球の軌道などはすでにアナリストによって解析済みだ。一方、同コーチの助言はNPBスコアラーの解析に近い。 「投手のクセ、牽制球を放るときとそうでないときのグラブの動き方などがアドバイスされているそうです。マッカローコーチが記者団に明かした限りですが」(前出・同) こうしたアドバイスは、NPBでは目新しいものではない。一塁コーチは相手投手のクセ、例えばランナーがいる場合、セットポジションに入ってから一塁を見る回数によって牽制があるかないかなどを頭に入れている。また、NPBでは、ランナーが一塁にいる場合、投手はクイックモーションで、1.25秒以内に捕手のミットに球を投げることが最低条件となっている。だが、メジャーリーグではクイックモーションの巧い投手は多くない。盗塁阻止のためクイックができて当たり前という解釈はNPBだけで、「盗塁したければ、どうぞご勝手に」と考えるメジャー投手も少なくないそうだ。 「学生野球やマイナーリーグに、クイックモーションを教えられるコーチが少ないからだと思います。日本に移籍した投手にNPBの監督が『クイックができない』と嘆くのはそのためです。相手バッターに対し、打球の方向など細かなデータ解析が進む一方で、小技を使わず、1対1の勝負を挑む要素も残っているからでしょう」(米国人ライター) そのせいか、マッカローコーチの助言について、「相手も動いているので判断しにくい。せっかくの助言だけど、試合で活かしきれていない」とこぼす選手も少なくないそうだ。大谷は日本ハム時代に相手投手のクセを見抜く映像チェックを経験している。メジャーリーグでも、盗塁は攻撃面における重要な作戦の一つだが、そのタイトル争いの常連は、脚力が尋常ではない“桁外れに足の速い選手”ばかりである。NPBのように相手投手のクセや特徴を巧みに見抜くマッカローコーチのスタイルは、大谷に合っていたのだろう。 「マッカローコーチはイーストカロライナ大学で活躍し、インディアンズ(現ガーディアンズ)でキャリアをスタートさせましたが、マイナーでも目立った成績は残せませんでした。独立リーグに転じ、引退後、ボランティアで独立リーグの指導をしていたところをブルージェイズに認められ、同マイナーで指導者経験を積み、21年からドジャースにやってきました」(前出・米国人ライター) また、一塁コーチャーはホームゲームで対戦チーム側ベンチの正面に立つ。そのため、相手チームの監督や主力選手と目が合うこともあり、出塁した選手に耳打ちしたりするのは「そちらの手の内はお見通しなんだよ」と、心理戦を仕掛ける意味もあるという。MLBでは攻撃のサインはベンチから出されることのほうが多い。だが、「相手ベンチの真正面に立つ」一塁コーチャーがキーマンになるようだ。