子ども3人、全員「オール国公立」で有難いが…年収1,200万円の58歳部長「退職金2,500万円でも全然足りません」定年間際の焦燥【FPが解説】
Sさんの父親ががんに罹患…マネープランが悉く崩壊する
Sさんが部長に昇進し、しばらくしたころ、Sさんの父親(80歳)が大腸がんを発症しました。幸い進行度は初期段階でしたのでひと安心していたところ、1年後に再発したのです。 Sさんの両親はSさん宅から、車で1時間半ほど離れたところに住んでいます。いままでは、“遠い”と感じるほどの距離ではないと思っていました。しかし、両親の年齢的に運転させることは不安なため、病院へSさん夫婦が車で連れていったり、度々様子をみにいったりと、そうした交通費が日に日に嵩むこと、往復で3時間の時間を要することから、1時間半程度の距離がこんなにも重く感じるとは、とSさん夫婦は疲弊していきます。 高齢の両親、特にSさんの母親(82歳)は父親ががんを発症したころから、看護やこれからの生活について不安を口にするようになっていました。 Sさんには妹(53歳)がいますが、遠方に嫁いでいるためたびたび実家に行くことはできません。 Sさんの妻は、週に2~3回、Sさんの実家を訪問することになりました。不定期に母親から連絡があるので、パートは一旦辞めざるを得ませんでした。 Sさんの自宅では、家族が集まるたびにSさんの両親の話題になっていました。身近な人が“がんを発症した”となれば、動揺するのは当然でしょう。幼いころから祖父に大変なついていた長男は、大学受験を控えていましたが、合格はほぼ確実といわれていたにもかかわらず、受験に失敗してしまいます。 これにより、1年間の高額な予備校の費用を負担する必要が出てきました。2度目の受験では無事合格できましたが、地元の大学には届かず他県の国立大学に通うことになりました。長男には仕送りとして毎月15万円を用意することにしました。
結婚年齢が比較的高い夫婦のマネープラン
いまのところSさんの父親にがんの再発は、ありません。Sさんの母親にはすぐ近くに弟(78歳)が住んでいますので、ときどき実家の様子を見てもらうように依頼し、Sさんの妻もいまではパートに復帰することができています。 長女は高校3年生で、受験を控えています。学校の成績はよいので、第1志望で国公立を目指していますが、長男と同様に他県の大学に通うかもしれない事態に備えておかなければなりません。 60歳で継続雇用制度を選択すると、年収は現在の1,200万円から3分の1程度になるということがわかっています。 「60歳以降、会社に残るか転職するか……」 このままでは、退職金から教育費を支払わなければならないかもしれません。 老後資金の準備ができないということはないと思われますが、結婚した年齢が比較的高いSさん夫婦の場合は、教育費のかかる時期と老後資金の準備、親の介護が重なることをもう少し早めに気づいておくべきだったでしょう。 Sさんは、父親ががんになったとき「親父が病気になるなんて、いままで想像したこともなかった……。自分もそういうことがこの先あるかもしれないんだ……」と痛感したそうです。 たとえばがん治療は、先進医療や、医療費の全額が自己負担となる自由診療を選択して、多額の治療費がかかるケースもあります。自分の命を採るか、学費を採るか、という選択を迫られるかもしれません。 お子さんにはまだお金がかかります。いま一度、病気やケガ、万一のことが起きたときの備えについて確認しておきましょう、とお伝えしました。 藤原 洋子 FP dream 代表FP