エアコンを切ると数時間後には暑い…原因は家の性能にあるかも!?環境学教授が教える断熱住宅のメリット6
メリット4/どんな構造でも取り入れられるので設計の自由度が広がる
断熱工事は、壁厚がわずかに増えますが、そのほかに設計の制約条件がきつくなるようなことはほとんどありません。 逆に暖房や冷房のための設備が最低限で済むので、設計の自由度は広がるともいえます。 愛知県名古屋市に建つ「庭のあるシェアハウス」は、その好例。箱が幾重にも重なった複雑な形状が特徴的です。 「壁があるほど表面積が増えるので、熱が逃げやすくなるのですが、この家は断熱をしているのでその心配がない。 見通しきれない空間構成が過ごす人々に適度な距離感を生み、プライバシーも確保している。断熱のメリットを理解し、デザインに見事に落とし込んでいます」と宿谷さん。
メリット5/適度な換気でいつでも新鮮な空気を味わえる
閉じきった室内でエアコンをかけると、チリやほこりだけでなく人が排出する二酸化炭素など、汚れた空気が空調の風によって部屋中に充満することになります。 「空気清浄器はほこりをとれても二酸化炭素はとれません。新鮮な空気を味わうには換気が必要なんです」 断熱住宅では、夏場も冬場も窓を開けてもすぐには温度が変動しないので、適度な換気を行い常にきれいな空気をキープできるようになります。
メリット6/遮音性・吸音性があるので静かに過ごせる
断熱材の意外な特徴の1つに、遮音性・吸音性の高さがあります。 断熱材には細かな気泡が組み込まれており、この空気の層が外部からの騒音をシャットアウト。 テレビなどの音の室外漏れを軽減してくれる効果も期待できます。 断熱材は代表的な発泡プラスチックを使用したボード状のものから、古新聞やウールの毛を不燃加工したものまで種類が豊富。防音性のレベルが異なるので、用途を考えて選択をしましょう。
宿谷邸に学ぶ断熱リノベのティップス
ここからはさらに、宿谷さんの自宅マンションから、具体的な断熱リノベのティップスをいくつかお届けします。断熱住宅づくりの参考にしてみてください。 ・大きな開口部にはペアガラスを LDKの大きな窓には日本板硝子の「低放射複層ガラス」を設置。外側のガラスに特殊な金属をコーティングした高断熱Low-E膜が日射熱を外に反射させ、断熱性能を高める仕組み。 「昔に比べて手頃な価格帯のものも増えてきているので取り入れやすいのでは?」と宿谷さん。専用アタッチメントを使えば集合住宅のサッシにも使えます。 ・日本の夏に必須。寒冷紗で遮熱 日よけの方法は、外付けブラインドやグリーンカーテンなどさまざまありますが、宿谷邸では広々としたデッキテラスの三方にオーダーメイドで制作した寒冷紗のオーニングを設置する方法をとっています。 寒冷紗は野菜の栽培で用いる薄い布で、害虫の侵入を防ぐだけでなく、太陽光を遮光する効果も。色は黒いもののほうが遮光率が高くなります。 ・天井100㎜、壁に50㎜の断熱材を吹き込む マンションの最上階の宿谷邸は、断熱材を壁に50㎜、天井に100㎜吹き込みました。 「天井は太陽からの光が最も当たるので厚めにしています」 仕上げには、壁は珪藻土、天井は漆喰を使用。珪藻土は調湿性能がある素材なので空間に取り入れると、結露の軽減にもつながります。 ・カーテンの裾の長さが断熱効果を高める テラスに面した開口部には、カーテンボックスを造作。冬場はペアガラスの表面温度も下がるので、このカーテンボックスによって、窓とカーテンの間に空気の層をつくっています。 これだけで布の表面温度が4度ほど変わるそう! 冷気が部屋に入り込まないよう、裾は床につく長さにするともポイントです。