大企業製造業景況感が2期ぶり改善、7月利上げ観測維持へ-日銀短観
(ブルームバーグ): 日本銀行が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の景況感は2四半期ぶりに改善した。日銀の7月の利上げ観測が維持されそうだ。
大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス13と、3月調査(プラス11)から2ポイント改善した。市場予想のプラス11を上回った。先行きはプラス14と改善が見込まれている。業種別では繊維や紙・パルプ、石油・石炭製品など素材業種を中心に改善した一方で、鉄鋼や生産用機械、造船・重機、食料品、自動車などは悪化した。
大企業非製造業の業況判断DIはプラス33と、1991年以来の高水準だった3月調査(プラス34)から小幅に悪化した。悪化は2020年6月調査以来、4年ぶり。市場予想と一致した。先行きはプラス27と悪化が見込まれている。業種別では小売りや対個人サービス、宿泊・飲食サービスが悪化した。
足元の円安加速で輸入物価上昇への懸念が強まる中、市場では日銀が30、31日の金融政策決定会合で国債買い入れの減額計画と共に追加利上げも決めるとの見方が浮上している。植田和男総裁は、円安が基調的な物価上昇率に影響すれば政策対応もあり得るとの見解を表明している。大企業製造業の景況感の改善は利上げへの思惑を後押しする材料となり得る。
野村証券の岡崎康平シニアエコノミストは、製造業は予想よりも良かったが、自動車がほとんど改善せず、先行きも少し悪化を見込んでおり、「認証不正問題が景況感の下押しになっている」とみる。同問題が収まれば、「7-9月期に関して上振れリスクが後から出てきてもおかしくはない」と述べた。
一方、企業のインフレ期待を示す「企業の物価見通し」は、企業が想定する消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が平均で1年後2.4%、3年後2.3%、5年後2.2%となった。1年後は3月調査から横ばい、3年後と5年後は0.1ポイント上回った。日銀は金融政策運営で消費者物価の基調的な上昇率を重視しており、短観における企業の予想物価上昇率はその動向を見極める上での手掛かりの一つとなる。