トランプ暗殺未遂事件から振り返る歴代の“大統領暗殺映画”有村昆が解説
7月13日に発生した、ドナルド・トランプ前大統領が演説中に銃撃を受けたという銃撃事件は、世界中に衝撃を与えた。まるで映画のような現実が日々報道される中、映画評論家の有村昆に、大統領暗殺をモチーフにした映画作品をレコメンドしてもらった。 【関連写真】この映画をきっかけに実際の大統領暗殺未遂事件も トランプ元大統領が演説中に狙撃され、まさに間一髪で銃弾が外れて休止に一生を得るという暗殺未遂事件が起こりました。 直後に撮られた、アメリカ国旗をバックに流血したトランプが拳を突き上げる写真を含めて、本当に映画のような事件でしたけど、僕がそう感じたのは、大統領や政府の要人を暗殺するシーンが出てくる映画というのは本当にたくさんあって、あの場面にどこか既視感があったからなんですね。 この事件の報道を観て、まず僕の頭に浮かんだのは2008年に公開された『バンテージ・ポイント』という作品です。 映画は、スペインのサラマンカという場所で開催されている国際サミットで、アメリカ大統領がスピーチを行うこととなり、その中継を担当するテレビスタッフたちの視点からはじまります。 大勢の観衆が集まる屋外の広場で大統領が演説をはじめると、どこからか銃声が鳴り響き、大統領が狙撃されて倒れてしまう。まさにトランプの事件とそっくりです。映画ではさらに演台に仕掛けられていた爆弾が爆発し、現場はパニックになってしまいます。 大統領は大丈夫なのか、犯人は誰なのか、と映画を観てるこちら側も何が起こっているのかわからなくなってしまいますが、ここで映画内の時間が狙撃直前まで巻き戻り、今度は大統領の警護についているシークレットサービスの視点で、この事件の一部始終が綴られていきます。 『バンテージ・ポイント』は、この大統領暗殺事件を別々の視点で何度も繰り返し、徐々にその真相に近づいていくという非常に凝った作りになっているんですね。 そのため登場人物も多いんですけど、デニス・クエイドが演じているのが大統領警護のSP。彼は以前に任務を失敗したという過去があって、久々の復帰となった日にこの暗殺事件が起きてしまうんです。 他にも地元の刑事、たまたまその場にいた旅行者、そして大統領自身の視点と移り変わっていき、本当に先が読めません。それでも非常にわかりやすく演出されていて、しかも上映時間90分にまとまっている。娯楽映画の見本のような作品です。 この映画のなかで、たまたま撮られていたビデオに映っていた怪しい動きをする人物が誰なのかというのがひとつのカギになってきます。 今回のトランプ暗殺未遂事件も、公式の中継カメラだけでなく、様々な人が現場を撮った映像や写真が流出しています。これがまた『バンテージ・ポイント』みたいだなと思ったんですよ。 今やみんなスマホを持ってる時代ですから、誰もが動画を撮れるし、屋根の上に人がいたとか、警備の人に注意したけど取り合ってもらえなかったとか、まさにそれぞれの視点があるんですね。 そして気になるのが、事件発生と同時にネットなどで飛び交った陰謀論的な視点です。 『バンテージ・ポイント』には、中盤にすべてをひっくり返すような展開が待っているんですけど、このような隠された真実や政府が国民を欺くような仕掛けというのは、現実にもあるんじゃないかと一部の人たちが感じているんですよね。