元兵庫県会議員が提言する、四面楚歌の斎藤元彦知事に残された「新党結成」とは異なる意外すぎる一手
伏魔殿はこうして形成される
表にはあまり姿を見せず、裏から指示をする。そんな「伏魔殿」の中心となるのは、盤石な支持基盤を持ち当選した1人区の議員たちである。1人区とは、1名しか議員が選出されない選挙区で、郡部の地域に多い。国政で例えるなら小選挙区だ。 例えば、奥谷委員長の選挙区は都心部である神戸市の一部で3人区、竹内議員は姫路市の8人区という大選挙区から選出されている。 一方で、兵庫県議会の86議席のうち17選挙区は1人区で構成されており、新人が現職に対抗できるほどの地盤を築くのは極めて難しい。このため、現職議員が強固な地位を保ち、長期間にわたって議席を占め続ける構図ができあがっている。 国政では、メディアの風が吹けば地盤が弱くとも当選する可能性があるが、地方選挙ではそのような風が吹くことはほとんどない。そのため、1人区では現職以外に大きく票が流れることは期待できない。結果として、彼らは5期(20年)以上、場合によっては兵庫県職員よりも長く議会に君臨し、強固な影響力を持つ存在となる。 これらの1人区で当選するのは、ほとんどが自民党系の議員だ。自民党議員は地域に根付いた地盤を持つため、安定して議席を確保することができる。 もうひとつ、同様に大きな権限を持つのが、旧民主党系の議員の中でも労働組合出身の「組織内議員」と呼ばれる議員たちだ。特に、公務員向けの労働組合である自治労や教職員組合といった組織率の高い(活動量の多い)労働組合は、組織票を背景に安定した当選を実現し、古参議員をバトンパスしながら、理事会などで重要な意思決定を行っている。 地方選挙では、国政選挙のような浮動票を取り込む仕掛けが難しく、メディアの報道も少ない。そのため、組織票を持つ議員たちは、選挙戦で圧倒的な優位性を持ち続ける。そんな組織内議員ににらまれることは、単に一人の議員を敵に回すだけでなく、労働組合といった組織全体からの冷遇を招く可能性が高い。 実際、私が過去の神戸市長選挙で、自分が所属していた旧民主党推薦の候補とは異なる候補を応援した際、対抗陣営の応援をしていることが問題視され、組織内でFAXでその情報が各所に伝達された。さらに古参議員からは「次の選挙に勝てないよ」と暗に組織への従うように諭されたのだ。これを拒否すると、すぐに除籍されることとなることはわかっていた。 議会の古参議員たちは、公の場では見えにくい形で力を持ち、政策や議会運営を牛耳る存在として機能している。今回の騒動は、自民党推薦だった斎藤知事が同党の意に反して動いたため、「元」斎藤派だった民主党系議員や他の会派議員までもが「反」斉藤で呼応した。その結果、歴史に残る「全会一致」による不信任案の可決が実現したのだ。