【ごみ屋敷清掃芸人に聞く】ごみの山の上を子どもが歩く「物屋敷」、「生ごみ屋敷」など、衝撃の「ごみ屋敷」の実態
一番やっかいな「捨てないごみ屋敷」
柴田さんが「一番やっかいなケース」として挙げたのが、ごみを「ごみじゃない」と言い張るごみ屋敷。敷地内にごみを山積みし、近隣住民が迷惑をしているという様子はメディアでも度々取り上げられています。 国も問題視していることから、「ごみ屋敷条例」を制定し、行政代執行で自治体が強制的に片づけできる仕組みづくりがされるようになりました。 「行政が一番苦労しているのはごみをごみだと認識しない、ごみは1個もないと主張するタイプですね。そういう人を説得するのはかなり時間がかかります。 このタイプの人はどうやっても捨てないですね。僕が担当したのはごみごと引っ越すというケースでした。『ごみではない』の一点張りで、キャップ1個さえ持っていく感じの人だったので、とりあえず全部持っていきましょうとなりました。 移転先にゴキブリが入ったごみの山を搬入しているうちに、ごみ屋敷の片づけをしているのに別の場所にごみ屋敷を生み出してしまっていると罪悪感を覚えました。ごみ屋敷の問題は闇が深いと感じましたね」
思い出がつまった「物屋敷」は時間がかかる
ごみの撤去を目的としたごみ屋敷の片づけと異なり、時間がかかるのが「物屋敷」の仕分け。 ごみではない物も多いため、依頼者によっては「要る」「要らない」をひとつずつ確認していくのだそう。 「取れたガンプラの腕もきちんと確認しますよ。こっちが要らないものだと思っても、依頼者にとっては探していた物ということもあります。 高齢の方はやはり時間がかかります。思い出をひとつひとつ振り返りながら、物やアルバムを確認していくのですが、写真は特に時間がかかるので、後で全部見ましょうと先に作業を進めることもあります。 旅行好きな人はお土産で旅を思い出すんですよね。左にしか首が行かなくなった赤べこを手にして、捨てるかどうか悩む人もいました。リユースを勧める場合もありますが、そのときは『これ持ってきましょう』って声を掛けました。 僕の悪い癖なんですけど、一言、何か面白いことを言いたくなるんですよ。その時も『その赤べこ、(ビート)たけしさんみたいになっていますね~!』と言いましたが、完全に無視されました(笑)」 ごみ屋敷清掃の経験を笑い話にして話す柴田さんですが、かなり体力、気力が削られるきつい現場が多いようです。次回は、ごみ屋敷を抜け出すきっかけや、ごみ屋敷にしないためにはどうしたらいいのかをお聞きします。 取材・文/阿部純子 撮影/横田紋子(小学館)