旧鉱山町のたばこ店の再生プロジェクト進む…1950年代の建物、地域の交流拠点に
かつて鉱山町として栄えた兵庫県養父市大屋町明延で、地域のシンボルだったたばこ店を改装し、交流拠点として再生するプロジェクトが進められている。当時の面影をとどめる建物の一つで、地元だけでなく、地域外に暮らす人たちも関係人口として巻き込み、物販などの機能も備えた施設にする。15日には活動をPRするイベントが開かれた。(熊谷暢聡)
建物は「小林たばこ屋」の屋号で親しまれた。1950年代に作られたという店の看板には、レリーフのような「 鏝絵こてえ 」と呼ばれる手法で竜が描かれ、「昭和レトロな建物」としてSNSで話題になった。約10年前に空き家となって売りに出され、地元で「思い入れのある建物を残したい」との声が上がったが、資金面や活用策の面から手つかずの状態だった。
今回の取り組みは、地域課題の解決を手がける「コミュニティデザインラボ」(宮崎県)のメンバーが建物の存在を知ったのがきっかけという。医療や福祉を軸にした地域づくりに取り組むNPO法人「但馬を結んで育つ会」(豊岡市)のイベントに参加経験があり、同NPOに働きかけて再生プロジェクトを今年3月に始めた。
50年代に4000人以上だった明延地区の人口は現在約50人で、多くが75歳以上。プロジェクトには地元の明延区や養父市社会福祉協議会も加わり、交流と高齢化が進む住民の利便性向上につながる施設にするという。
江戸時代に建てられた木造2階の母屋を含め、NPO関係者が建物を取得。ボランティアの力も借りて内装を改装した。物販コーナーのほか、住民がオンライン診療を受けられるスペースも設ける計画。「小林たばこ総合会館」の名称で、来年3月下旬のオープンを目指し、将来的には離れを活用してゲストハウスを開設する構想もある。
15日のイベントに参加した同NPOの千葉義幸代表は「限界集落で人が住み続けられる地域のモデル事業にしたい」と強調。明延区の小林史朗区長は「外部から来る人たちが盛り上がる場となり、結果として住民の利便性向上にも結びついてほしい」と期待を寄せた。
同プロジェクトでは、改修資金を調達するクラウドファンディングを来年1月末まで実施中。目標額は300万円。専用サイト「フォーグッド」で受け付けている。