交通事故死者数の“約36%”は「歩行者」…交通事故に遭わないために“歩行者が気を付けたいポイント”を専門家が解説
TOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」内でお送りしている「JA共済 presents なるほど!交通安全」。6月28日(金)放送のテーマは、「歩行者の道路横断中の事故」について。スタンレー電気株式会社の星野真也さんから、道路横断中の事故が起こる要因や注意点について伺いました。
◆歩行者の交通事故死者数が増加傾向に
今回は、公益財団法人 交通事故総合分析センター(イタルダ)が、自前のデータからあぶり出した“歩行者が交通事故に遭いやすい条件”に注目します。 2024年3月に警察庁が発表した統計資料で、ここ数年の交通事故 死亡者数・重傷者数を「クルマに乗車中」「オートバイに乗車中」「歩行中」の状態別で見ると、死亡者数は歩行者が最も多いという状況が続いており、2023年の死者数は全体の36.3%にあたる973人。重傷者数についても、歩行者が全体の25.9%にあたる7,171人と最も多いです。 横断中の事故には、横断歩道または横断歩道付近を横断中の事故と、横断歩道のない場所を横断中の事故があります。そのなかで、イタルダで道路横断中の事故について研究している星野さんによると、以下の2点が判明したと言います。 1:横断歩道を横断中の事故では、車両の進行方向が直進よりも右折時が多い 2:横断歩道がない場所では、車両が直進中の事故が多い これは、単路の横断歩道を横断中よりも交差点における車両右折時の事故が多く、逆に横断歩道がない場所を横断中では、単路における事故が多いことを反映していると考えられます。
◆横断時には周囲の安全確認を忘れずに
これらの事故をイタルダが保有する事故統計データから分析したところ、交通事故の件数の多い車両直進中と右折中について、「横断歩道の有無」「昼夜別に死亡重傷事故となった割合」を見てみると、「夜間車両直進中の死亡重傷事故率」がほかよりも高いことがわかりました。この結果に星野さんは「右折時は車両が減速しているのに対し、直進中は速度が高い状態で歩行者と衝突していることに起因していると考えられます」と分析します。 歩行者による横断歩道以外での道路の横断は「歩行者横断禁止」という標識がなければ問題ありませんが、車両の直前・直後に飛び出す行為は禁止されています。もちろん、標識がある場合は絶対に横断してはいけません。 では、歩行者が夜の道路を横断する際、どんなことに気を付けるべきでしょうか。星野さんは歩行者の人的要因として“安全確認なし”“安全確認不十分”の2点を挙げます。“安全確認なし”は、年齢に関係なく全世代で多いので気を付けましょう。また安全確認不十分は「左右の片方を確認したけれど、もう一方は確認しなかった」「一度、左右両方を確認したが、片側からの車両をやり過ごした後に、再度もう一方の安全確認をしなかった」などが該当します。 一方、昼に比べて夜の事故が多くなる人的要因として、星野さんは「件数はそこまで多くありませんが、『速度感覚の誤り』や『判断の誤り、その他』が該当します。『速度感覚の誤り』は、車両の速度感・接近感を誤って認識してしまうことで“横断できる”と思い込んで道路に出るも、横断しきるまでに車両が到来して衝突するケース。『判断誤り、その他』は“先に横断できると思った”などの思い込みによる誤判断などが該当します」と解説。判断の誤りは夜が多いことに注意しましょう。 そして、警察庁が発表した統計資料では、歩行中の交通事故は特に65歳以上に多いことがわかります。 <歩行中の死者数(2023年)> 65歳未満:258人 65歳以上:662人 <歩行者死亡事故の発生場所割合(2023年)> ・横断歩道横断中 65歳未満:51人(約20%) 65歳以上:149人(約23%) ・横断歩道以外 65歳未満:55人(約21%) 65歳以上:337人(約51%) ドライバーは夜間にスピードを出しすぎないように、“歩行者が飛び出してくるかもしれない”という可能性を念頭におきながらハンドルを握りましょう。 (TOKYO FM「JA共済 presents なるほど!交通安全」2024年6月28日放送より)