【現地突撃ルポ】有権者10億人が熱狂する世界最大級「インド総選挙」が面白い!
若い世代はどう考えているのだろう。筆者は20代の若者が集うホステルを取材した。「ゴルカランド独立の要求は何十年間も達成されていないし、これからも達成されることはないと思う。それよりも観光しか主要産業がないダージリンの経済発展を真剣に考えるべき」と語るのは、若くしてホステルのオーナーを務めるテンジさん。 彼の友人のアヴィラルさんは「とにかく若い世代にとって失業問題は深刻。今回の選挙もBJPが優勢になる可能性が高いが、失業問題に取り組む政党を民が選ぶと信じている」と語ってくれた。 国際労働機関(ILO)によると、インド国内の大卒以上の失業率は28.4%(2023年)。国の未来を担うのは若い世代だ。彼らの話を聞くうち、筆者も失業率の改善が実現されてほしいと願うようになっていた。 ■選挙熱の理由、そして結果予測は? さて、ここで『インドの正体―「未来の大国」の虚と実』(中公新書ラクレ)などの著書を持つ防衛大学校教授の伊藤融(とおる)氏に、インド総選挙の特徴を解説してもらおう。まず、この熱気はどこから来るのだろうか? 「インド人が政治に熱い理由は、主に3つあると考えています。ひとつ目は、インド人は『権力闘争』のようなドラマを政治の中に見いだし、街中でも政治家の話で盛り上がるほどの政治好きであること。映画好きな人も多いので、政治家を映画のヒーローのようにとらえる人もいます。 ふたつ目は、アイデンティティと政治の関わりが強いこと。例えば、特定のカースト(ヒンドゥー教における身分制度)を基盤にした政党もあり、政治を自分事としてとらえやすい。 3つ目は、政治と暮らしが結びついていること。『選挙集会に行けばチャイが飲める』という理由で動く人もいるほど、日本に比べて生活が苦しい人も多い。 そして、そんな自分たちの暮らしを良くするためには、政治に関わらなければいけないという切実さがある。こうした理由が重なり合うことで、『どんなに暑くても選挙に行く!』という熱気が生まれるんです」 今回の総選挙の結果予測はどうだろうか。 「どの予測報道もモディ政権の継続が確実と言っていますが、インドの選挙は最後までわかりません。モディ人気の要因は、叩き上げで首相になった経歴と演説のうまさ。日本でいえば田中角栄と小泉純一郎が合体したような人物で、庶民からの人気は圧倒的です。