【現地突撃ルポ】有権者10億人が熱狂する世界最大級「インド総選挙」が面白い!
さらに、モディ氏をかたどったプラカード、モディ氏の写真付き帽子と、至る所にモディがおり、ヒンドゥー教の神様のコスプレをした人までいる。「派手さ」だけでいえば、確実にTMCを上回っている。 選挙カーの数もTMCが1台だったのに対し、BJPは5台、おまけにメディア用の小型トラックまである。「インドの女神に勝利を!」や「母なるインドに栄光あれ!」などのスローガンが声高に叫ばれる。取材中のこちらまでなんだかテンションが上がってくる活気だ。 そのとき、「ハロー!」と声をかけてきた男の子がいた。この子、どこかで見たような......。なんと! 先日のTMCの遊説でも見かけた子だ。そのときはTMCの旗だったが、今はBJPの旗を持っている。サクラの仕事をしているのだろうか......敵対する政党双方の仕事を受けるとはしたたかすぎる......。 こうなると、遊説の参加者たちのどこまでが本当の支持者なのか、わからなくなってくる。ムスリムとおぼしきヒジャブをかぶった女性たちが「モディはムスリムをサポートしています」というプラカードを掲げていたが、彼女たちも本当にムスリムなのか......? 何はともあれ、与党BJPの底力と、インドの人々のしたたかさを実感した。 ■独立か失業対策か、地方の世代間ギャップ 別日、投票所を取材するため、筆者は州都コルカタから約600㎞離れた北ベンガルのダージリン(西ベンガル州)を訪れた。平均標高が約2000mで、灼熱のコルカタに比べると一気に気温が下がる。汗だくの遊説取材が嘘のようだ。 そして、ダージリンといえばダージリンティー。市中から少し離れれば風光明媚な茶畑が一面に広がる。 早朝午前7時から投票は始まった。インドでは電子投票機が用いられ、候補者の名前がついたボタンを押せば投票完了。読み書きができない人のために、政党ごとのシンボルマークもしるされている。投票後の男性は、「朝のジョギングから直接投票に来たよ。いい気分さ」と指につけられた投票済みの印を誇らしげに見せつける。 一方、投票所周辺にたむろする壮年の男性たちに話を聞くと、「政治にはゴルカランドの実現を一番に求めている」と血気盛んに語ってくれた。「ゴルカランド」とは、ネパール系山岳民族であるゴルカ族の住む土地を意味する。 つまり、彼らは自分たちの独立を求めているのだ。ベンガル系インド人から絶大な支持を誇るTMCも、ネパール系インド人が大半を占めるダージリンでは批判的な人もいる。「TMCは汚職ばかり。信用できない」「TMCを支持するくらいなら、BJPを支持したほうがマシ」という声もあった。 実際、2019年の総選挙ではBJPがダージリンで議席を得た。同地におけるBJP人気は、モディ氏やヒンドゥーナショナリズムへの支持ではなく、TMCとの不和の結果なのかもしれない。