【現地突撃ルポ】有権者10億人が熱狂する世界最大級「インド総選挙」が面白い!
■地元人気の地域政党vsお祭り騒ぎの与党 西ベンガルの地域政党「全インド草の根会議派(TMC)」の人気は、特にコルカタでは随一で、前回の総選挙(2019年)では、コルカタのすべての選挙区でTMCが勝利するほどだ。筆者は今回、TMCの選挙カーの遊説に同行できることとなった。 事務所で支持者たちと一緒に選挙カーの到着を待っていると、初老の女性が「よそ者のBJPを支持するなんて考えられない。ベンガルのために尽くしてくれているTMCを私は応援するよ」と語ってくれた。 そのうち、事務所前には小型トラックで支持者たちが次々と運ばれてきた。体感温度40℃を超える灼熱地獄の平日にもかかわらず、いつの間にか数百人もの人数に膨れ上がった。そこにようやく選挙カーが到着し、遊説スタート。 車上では候補者が優雅に手を振る。車の渋滞など気にも留めず、選挙カーは恐るべき低速度で走り、道路はゾロゾロと歩く支持者で埋め尽くされた。日本では選挙カーが交通を妨げることはないし、そもそも何百人もの人が選挙カーと共に歩くなんて考えられない。まさにインド流の選挙活動だ。 TMCのシンボルである「ふたつの芽」は、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒(ムスリム)を象徴しているといわれる。TMCの選挙カーがモスクの前を通ったとき、ひとりのムスリムが候補者に手を振っていた。 これがヒンドゥー至上主義のBJPの選挙カーだったら、同じ反応をしただろうか。ムスリムがおよそ20%の人口を占めるコルカタでは、ムスリムの票を取り込むことは重要な戦略だろう。 「BJPを打ち負かせ! TMCが絶対勝利!」 「BJPが政権に就いてから、薬の値段がどんどん上がり続けている。私たち庶民が望んでいるのは、家族が病気のときにいつでも薬を買えること。BJPのモディはシャー・ルク・カーン(インドで絶大な人気を誇る映画俳優)と友人だが、われわれTMCの友人は今ここにいるあなたたちだ!」 「昔から私たちの近所にひとりはムスリムの友達がいた。でも今BJPは私たちの友人を傷つけている! 彼らの暴挙を見過ごしていいのか?」 候補者と支持者は、声を張り上げながら街中を数時間かけて練り歩き、道行く人々にメッセージを伝えていた。 その数日後、筆者は運よくBJPの遊説にも遭遇した。BJPにとってコルカタは"敵地"。集まりは小規模だろうと高をくくっていたが、想像以上の盛り上がりだった。まず驚いたのは、打楽器隊がいること。リズムに乗って、文字どおりのお祭り騒ぎが繰り広げられていた。