実は生活にも役立つ!身近なノーベル経済学賞理論【WBS】
14日、今年のノーベル経済学賞が発表され、ダロン・アセモグル教授ら3人が受賞しました。これに合わせWBSでは、過去の受賞者の研究が実生活に役立てられている現場を取材しました。意外と身近なノーベル賞理論とは、どんなものなのでしょうか。 ノーベル経済学賞 米MITアセモグル教授ら3氏受賞 今年ノーベル経済学賞を受賞したのはアメリカ・マサチューセッツ工科大学のダロン・アセモグル教授、サイモン・ジョンソン教授、シカゴ大学のジェームズ・ロビンソン教授の3人です。植民地化された国の社会制度が国家の繁栄に果たす役割に関する研究が評価されました。国家間の経済格差を縮小することが現在の課題となる中、これを達成するための社会制度の重要性を実証したということです。
過去の受賞者の理論を生かしているのが、東京・八王子市です。健康を守る検診の呼びかけでノーベル賞の理論を使っています。 「大腸がんの検査キットを自宅に送ったあと、今回検診を受けないと来年度は検査キットを送らないというはがきを送ったところ、市民の受診率が上がった」(八王子市成人健診課の田島宏昭課長) これまで使っていた「今年受診したら来年も送ります」という文言を「今年受診しないと来年は送りません」に変更。この裏にあったのが、2017年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大のリチャード・セイラー教授らが研究する行動経済学の「ナッジ理論」です。人は必ずしも合理的ではないという前提で「そっと後押しする」という意味の“ナッジ”により、人々の行動を促すというものです。 「損失を回避したいという思いが働く」(田島課長) 八王子市の大腸がん検診受診率は文言変更前は22.7%だったのに対し、損失を強調した文言に変更後は29.9%と受診率が7.2ポイントアップしました。文言を変えただけのため、予算はかかりません。受診率のアップは病気の早期発見や治療につながり、1人当たりの医療費で614万円の削減効果が出ています。 「より身近なところにこういうもの(理論の応用)が眠っていることに気付き取り入れている」(田島課長) 他にも行動経済学が生かされている現場があります。渋谷区の喫煙所にある投票箱形式の吸い殻捨てには、「不動産を買うならどっち?」などの質問が書いてあります。捨てることが動機が生まれたことで、地面へのポイ捨てがおよそ9割減りました。