混戦の自民総裁選、金融正常化目指す日銀に試練も-トレーダーガイド
(ブルームバーグ): 史上最多の9人が立候補した自民党総裁選挙(27日投開票)は報道各社による国会議員、党員など有資格者を対象にした調査で上位争いは絞られてきたが、決定打を欠き、終盤まで混戦が続く。特に金融政策の正常化を目指す日本銀行にとっては、追加利上げに否定的な有力候補者もいて、今後試練を迎える可能性もある。
与党が衆参両院で過半数を握り、事実上の次期首相選びとなる自民党総裁選は金融や安全保障、社会保障、エネルギー、選択的夫婦別姓問題など多くのテーマで政策論争が行われてきた。特に金融を巡っては、日銀の利上げ是非や金融所得課税が話題に上り、選挙結果が株式や債券、為替市場に影響を及ぼすことは必至だ。
日銀は3月、長期化するインフレに対応するため17年ぶりの利上げに踏み切り、マイナス金利政策を終了した。さらに、円相場が約38年ぶりの安値を付けた7月に追加利上げを実施。直前には、円安対策として利上げを求める声が政治家から相次ぎ聞かれたが、日銀のタカ派姿勢に米国景気の減速懸念が重なった8月初めに日本株相場が歴史的な急落を演じると、永田町からの風向きは変化した。
日銀の独立性は法律で担保されている。しかし、香港のレイリアント・グローバル・アドバイザーズでポートフォリオ・マネジメント部長を務めるフィリップ・ウール氏は、誰が勝っても日銀は「政治家が中央銀行に影響を与えるために発言する機会が増えることに慣れなければならない」と指摘する。日銀には不満がたまる状況だが、インフレと金融政策に対する国民の注目度は高まっているためだ。
報道各社の調査によると、3人の候補者が有権者の支持を集めている。石破茂元幹事長、高市早苗経済安全保障担当相、小泉進次郎元環境相で、石破氏は金融政策に関しタカ派的な立場で、金融所得課税の強化も示唆。高市氏が勝てば初の女性首相誕生となり、金融緩和政策の継続を主張するハト派だ。候補者の中で最年少の小泉氏は党内や国民の間で人気が高く、金融市場への影響を懸念する声は少ない。