混戦の自民総裁選、金融正常化目指す日銀に試練も-トレーダーガイド
石破氏
石破氏は金融政策に対しタカ派スタンスの候補者の1人で、後に軌道修正したものの、総裁選公示前のテレビ番組では金融所得課税の強化にも意欲を見せた。このため、市場参加者の間では今年に入り史上最高値を更新した日本株相場への悪影響を懸念する声も出ている。
レイリアントのウール氏は石破氏や河野太郎デジタル相、茂木敏充幹事長といった「ベテラン候補者らはタカ派過ぎるリスクがあり、株式にとって逆風となり、過度な円のボラティリティーを招く恐れがある」と警戒感を示す。
対照的に石破氏が勝利した場合、追い風を受ける可能性があるのが銀行など金融株だ。東証33業種の銀行業指数は日本株が急落する8月初旬まで、日銀の金融引き締め観測を材料に最も高いパフォーマンスを上げていた。
25日時点の年初来上昇率は18%と、12%の東証株価指数(TOPIX)を依然上回っているが、日銀の植田和男総裁が追加利上げの判断には時間的余裕があるとの認識を示し始めたことでアウトパフォームの度合いは縮小傾向。しかし、タカ派の首相が誕生すれば、銀行株は再び上昇の勢いを取り戻す可能性がある。
高市氏
上川陽子外相と共に女性候補者の1人である高市氏は金融緩和政策の支持者で、日銀が金利を引き上げるには時期尚早だと主張する。23日のインターネット番組では、「金利を今上げるのはあほやと思う」と発言した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは「高市氏はアベノミクスの継承を唱えており、財政政策の拡張と金融緩和の長期化が意識される」と指摘。総裁選で勝てば、「市場の初期反応は円安、金利低下(債券価格は上昇)、株高だろう」と予測する。
一方、2年前に英イングランド銀行(中央銀行)が利上げを継続する中、当時のトラス政権が財政拡張策を強行し、急激な通貨安と金利上昇に見舞われた二の舞を警戒する声も聞かれる。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは「『貯蓄から投資』が外貨性資産を中心に盛り上がる中、政治の不用意な情報発信が日本版『トラスショック』のトリガーを引かないことを祈りたい」としている。