混戦の自民総裁選、金融正常化目指す日銀に試練も-トレーダーガイド
日本版トラスショック恐れる市場、高市氏の日銀圧力警戒-自民総裁選
小泉氏
43歳と最年少で、元首相を父に持つ小泉氏は国民の人気も高く、報道各社の調査では国会議員の間でトップの支持を集めている。岸田文雄首相の路線を継承すると市場では予想されており、主要政策の一つが労働改革とライドシェアの全面解禁だ。
労働改革の一環で解雇規制の見直しに言及しており、勝利した場合にはリクルートホールディングスやディップなどの人材派遣・紹介企業のほか、ライドシェア関連ではタクシー会社や配車アプリの運営企業などが動くかもしれない。
野村証券の松沢中氏チーフ・ストラテジストは投資家向けメモで、「小泉氏の首相選出は市場に最も中立的。直後は債券ベア・フラット化、株高、円高」との見方を示している。
元環境相の小泉氏は気候変動対策を巡る言及も多く、日立製作所など温暖化ガス排出の削減につながるグリーンテクノロジー企業、再生可能エネルギーの発電を担うレノバなどに好影響が及ぶことも想定される。
エネルギー、防衛分野
9人の候補者の間では原子力発電所の再稼働支持に加え、東アジア情勢を巡り中国やロシア、北朝鮮の地政学的脅威が高まる中、防衛力の強化を容認する点ではおおむね一致している。
経済安保の観点から半導体産業で米国や台湾、韓国などと新たなサプライチェーン構築と日本のプレゼンス強化を目指しているが、高度化する半導体の電力消費は激しくなる一方で、目標達成には原発を含む電力の安定供給は欠かせない。原発の再稼働が今後増えれば、東京電力ホールディングスなど電力株は需要増加と発電コスト低下の双方から恩恵を受けることになる。
また、候補者の多くは日本の安全保障強化に前向きだ。防衛省が8月30日に公表した25年度予算の概算要求額は、前年度比11%増の8兆5389億円と過去最高に達している。防衛製品需要の拡大観測からIHIや三菱重工業は日経平均株価採用銘柄の年初来上昇率で上位に並んでおり、こうした流れは続く公算は大きい。