人気番組も密着するバレンタインの覇者「アマゾンの料理人」太田哲雄。″農家が一番になる世界”を目指して
“フランス勢と戦いたい”「サロン・デュ・ショコラ」で火が付く太田氏の野心
太田氏が「サロン・デュ・ショコラ」に参加したのは、2019年。今まで主にショコラティエが中心となっていた本イベントで、「料理人」が一石を投じる形になった。デビュー当時に出した「アマゾンカカオと玉ねぎのグラタン」「牛ほほ肉の赤ワイン ・アマゾンカカオソース」といったメニューは人々を驚かせた。 参加するきっかけは、熱い想いを持つバイヤーだったという。「太田さん、もっとカカオの世界を広めてもらえませんか? そして今のショコラティエに刺激を与えてほしい」とバイターに言われた太田氏は驚いたという。完全アウェイな状況での「サロン・デュ・ショコラ」の参戦は、太田氏のハートに火をつけた。 「そのお話が来たときはカカオの輸入をして、少したったぐらいのときでした。私は料理人ですがお菓子を作っていたし、ずっとチョコレートの世界に疑問をもっていました。“このままだとサロショ終わる”と思っていたほどです。 “フランス勢と戦いたい” その想いが高まる一方でした。いつかフランス勢の中で戦ってみたい、今でもその野心を持ち続けています。」
煌びやかなショコラティエたちと、重労働と貧困で苦しむ生産者たち。カカオを巡る表舞台と裏舞台の格差
太田氏「2019年、初めて参加した『サロン・デュ・ショコラ』の会場でショコラティエたちに聞いたんです。カカオ農園へ行ったことありますか? 発酵の過程を知っていますか?と聞いたら8割ぐらいの人が行ってなかったし知らなかった。チョコレートひいてはカカオの本質を誰も考えていなかったし、知らなかった。私は現地で足を運んでその現状を見て知っていて、経済的格差を目の当たりにしていました。 日本のバレンタイン市場ではチョコレートが、何千という数が飛ぶように売れていく。ショコラティエたちはサインを求められ、壇上にあがり、キラキラしてかっこよかった。でも、農園を持っている人は誰もいなくて、栽培している人もいない。チョコレートを加工して商品として手掛けるだけで、同じカカオを一つで“ここまで世界が違うのか”と衝撃を受けました。 私はもっと地に足をつけて、原産国が豊かになるようなことを考えたいと強く心に思いました。少しでもいいから農園にいって、カカオの本質を知ることが大事だし、そうじゃないとそれを知ったうえで作るものと知らないとで作ったものでは“美味しさ”で変わってくると思っています。 『AMAZON CACAO』は、小規模の生産農家を抱えている、そんなブランドです。」
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