転換期を迎える琉球ゴールデンキングス、安永淳一GMが語るチーム作りの哲学(後編)「選手の力だけに頼っているクラブでは先がない」
「既存の選手たちは、まだまだ覚醒する要素を秘めています」
――今村選手が抜けた穴埋めとしてネームバリューのあるベテラン選手を補強する選択をとっていません。そこを不安視する声をどのように捉えていますか。 私は編成の仕事で大切にしているのは、スター選手を集めて勝つチームは作りたくないと考えています。例えば1、2人のスーパースターがいたとしても、個人能力は高いチームになると思いますが、チーム力全体が高くなるかといえば、決してそうではない。やはり、いかに適材適所でチームとして戦うことができるかが大事です。そしてキングスはスターターだけでなく、ベンチから出てきた選手も勝利に貢献できる、選手層が厚いチームです。ただ、それ故に若手選手に出番がなかなか回ってこなかったりすることもあります。既存の若い選手たちは、まだまだ覚醒する要素を秘めています。だからこそ、今村選手が抜け、すぐにエース級の選手を獲得するのではなく、まずは既存の選手たちの力をより引き出すことを考えました。なので、今回移籍市場に出ていた日本代表メンバーなどの選手たちへ契約オファーはしませんでした。 今村選手や牧選手などの移籍によって今シーズンは、新しいサイクルに入るタイミングが当初の予定より早まったところはあります。まず、これまで岸本選手以外にポイントガードがいないと言われていましたが、経験豊富な伊藤達哉選手が加わってくれました。伊藤選手はリーグでもトップクラスの視野の広さをもっていると考えており、これで、キングスのバスケットがさらにパスがよく回るチームになることで、これまで以上にチームとしての厚みがでると考えます。こうして堅実な部分が増した分、アルマ選手もそうですし、シュート力に優れている松脇圭志選手、大物の片鱗を見せてくれた脇真大選手がどんどん絡んでいく姿をさらに見てみたいです。ルーキーの脇選手は、ファンの皆さんも温かい目で見守って頂きたいですが、これから驚くようなプレーができる選手になると期待しています。実績のある先輩たちがたくさんいると、若手にチャンスが回ってくるのは難しいです。若い力が台頭してくれば、ベテランもうかうかしていられない。そういうチームに変わっていくと思います。 ――新シーズンは成長するための我慢が必要となるのか。新しいサイクルに入ることで、生みの苦しみを味わう1年になると考えていますか。 いえ、決して成長のために我慢しないといけない、といった風には思っていなく、成長だけでなく、成績も求められる編成を意識しました。だからこそ、選手だけでなくチームに関わる全員がもっと仕事をしないといけないという考えています。繰り返しになってしまいますが、今のBリーグは能力の高い選手が自由にプレーして勝てる時代ではなく、本当に組織力が必要です。これからの状況次第で新しい選手を取る可能性はありますが、新戦力の個の能力に依存するのは、キングスのスタイルではないと思っています。
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