モーツァルトの『交響曲第31番』に“パリ”の表題が付けられたわけは?【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
モーツァルト 『交響曲第31番“パリ”』 初夏のパリを彩る名作の誕生
今日6月18日は、モーツァルト(1756~91)の『交響曲第31番“パリ”』の初演日です。 モーツァルトが残した41の交響曲のうち、表題付きの作品は、『第31番“パリ”』、『第35番“ハフナー”』、『第36番“リンツ”』、『第38番“プラハ”』、『第41番“ジュピター”』の5曲のみ。しかしこれらの表題は、すべてモーツァルト自身の命名ではありません。 第31番が“パリ”と呼ばれるようになったのは、パリの「コンセール・スピリチュエル」の支配人、ジャン・ル・グロから聖体祭用の交響曲を依頼されたモーツァルトが、初夏のパリにおいて、3年半ぶりに交響曲を手がけたからだと伝えられます。 さらには、パリの聴衆の好みに合わせるべく、フランス趣味が盛り込まれていることも表題の理由となったようです。1778年6月18日に、「コンセール・スピリチュエル」で行われた初演は大成功を収め、前作30番を手がけてから3年半の間に、22歳のモーツァルトが恐るべき進歩を遂げたことを世の中に証明する結果となったのでした。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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