子どもに中学受験をさせるなら「母親のキャリア」を真っ先に考えるべき…佐藤優氏が指摘する「中学受験」の本質的な問題とは
受験の伴走者が父親ではダメなのか
「中学受験は加速度的に変わっています。首都圏と地方では実態も全く違い、受験への熱量は首都圏が圧倒しています。近年は京阪神に加え、札幌、仙台、名古屋、福岡、あたりの関心も高まっています」 【写真】子どもにとっては重大な人生の決断…何を基準に中学校を選ぶべきなのか と、語るのは、教育事情にも通じる元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏。
近年、中学受験は過熱していると指摘される。こうした状況にどう対処すべきか。佐藤氏はこう説く。 「東京に関して言えば、中学受験について考えるのは、子どもが小学校に入学した時点です」 なぜ中学受験の有無を小学校入学時点で決めないといけないのか。 「お母さんのキャリアを考えないといけないからです。中学受験と高校・大学受験の違いは小学生の子どもの自我が確立されているか否か。中学受験では一部の子どもを除いて自発的に受験勉強に臨むことができない子が多いですから、母親が受験勉強に完全に張り付くことになります。そのため、母親のキャリアをどうするかを決めないといけなくなる」 佐藤氏がよく相談を受けるのは女性の医師だという。 「小学生の子どもを持つ30代前半の医師は“大学病院に勤めていると子どもが受験を迎える30代後半は山になる。その期間に研究に集中して論文を書かないと大学病院に残れない”と言います。これは医師に限らず、高度専門職の方に共通する問題だと思います。中学受験では、受験勉強で3年間母親が仕事から離れるので、かなりの確率で自身のキャリアをあきらめざるを得なくなる。だから、最初 に決めるべきは母親のキャリアなんです」 父親が勉強の面倒を見てもいいのではないか、という疑問にはこう答える。 「父親が子どもの受験に張り付いてうまくいった例を私は知りません。父親は自分の経験に引っ張られる傾向があります。書店で自分が選んできた謎の問題集を子どもに強いて、塾の勉強に追加的な負担を生じさせてしまう。母親は塾の方針に忠実。子どもは母親の顔色を窺って勉強していますから、中学受験は母親のマインドがすべてを決めると言っていい」 この「母親のキャリア」という問題が意外と見逃されていると指摘するのだ。 「中学受験を描いた漫画『二月の勝者 ―絶対合格の教室―』(高瀬志帆 著/小学館)では受験に必要なのは“父親の経済力と母親の狂気”と表現しました。あの漫画は中学受験の世界を忠実に描き、“入門編”として最適です。ただし、そこに欠けているのは“母親のキャリア”という視点なんです」