大谷翔平とともにMLBに新たな歴史を刻んだ日系人がいた ドジャース実況アナが抱く「アジア系アメリカ人」の誇り
第1回(全3回):MLBチーム初のアジア系実況アナインタビュー 大谷翔平とロサンゼルス・ドジャースにとって、特別なシーズンとなった2024年。その活躍を実況アナとして伝え続けたのは、MLBのチームとしては史上初めてアジア系アメリカ人の実況アナウンサーとなったスティーブン・エツオ・ネルソン氏(35歳)だ。 2023年にドジャースに採用されたネルソン氏はアメリカ生まれの日系4世。そのバックボーンに誇りを持ち、実況を通してどのような思いを抱いてきたのだろうか。 【大谷の偉業を伝え続けた2024年】 日本人選手がメジャー球団の「顔」としてチームをポストシーズンに導き、強敵を次々と撃破して世界一に輝く──。大谷翔平は初めて、この偉業を成し遂げた。 その瞬間、もうひとつの歴史が生まれていた。2023年にロサンゼルス・ドジャースの実況アナウンサーとして採用され、MLBチームで初のアジア系実況アナとなったスティーブン・エツオ・ネルソンが、同じ場所からマイクを通してこの快挙を伝え続けていたのだ。 大谷が最後のアウトを確認し、フィールドへ駆け出す。そして、世界一の歓喜のなかでチームメートと次々に抱き合う。その光景を見ながら、ネルソンの声がラジオを通して世界中に届く。 「Swarm of Dodgers on the right side of the infield. Grown men but children again, living out their dream.」──「内野の右側にドジャースの選手たちが集まっています。大人たちが子供のような笑顔を見せながら、夢を叶え、その瞬間を存分に味わっています」。 大谷の栄光とともに、アナウンサーの声も歴史に刻まれた。 ドジャースの実況アナと言えば、野球殿堂入りのビン・スカリー、20世紀前半にパイオニアとしてニューヨークで名声を博したレッド・バーバーなど、アメリカ野球史に残る偉人たちの名前が挙がる。現在は2017年にスカリーの後継者となったジョー・デービス(37歳)が一番手だが、ネルソンは二番手としてテレビで60試合、ラジオで40試合くらいを担当する。そしてこのポストシーズンでは主にラジオの実況アナを務めた。 地区シリーズ対サンディエゴ・パドレスの第1戦、2回裏の大谷の同点スリーランホームランはこう伝えた。 「The Dodgers trailing by three. Cease into his windup. And Ohtani lights it up! Lights it up! Welcome to the postseason! The game's brightest star, ready for the game's biggest stage! A game-tying three-run homerun! The fire you saw come out of Ohtani after the homerun, too.Off the bat, was barking before he was halfway down the line」──「ドジャースが3点を追いかけます。シースが振りかぶり、大谷が打ち砕いた! 打ち砕きました! ようこそポストシーズンへ! ゲームの最高のスターが、最大の舞台で輝きを放っています! 同点に追いつくスリーランホームラン! 打った直後に見せた大谷の燃え上がるような闘志も印象的です。一塁ベースラインを走りながら吠えていました」。