「絶望的につまらない時代」ーー“Mr.やりたい放題”ケンドーコバヤシの流儀
下ネタもきつく聞こえないその品の良さの秘密は、彼の生い立ちにあるのかもしれない。芸人の中には、学生時代に内向的だったタイプが多いのだが、ケンドーコバヤシはそうではなかった。子供の頃から男友達の間でカリスマ的な人気があり、スポーツも勉強もできて異性にもそこそこモテていた。 「僕はずっと陽の当たる場所にいたんです。いわゆる『陽キャ』と言いますか。むしろ芸人としてはそこにコンプレックスがあったりもしました」 学生時代から周囲に一目置かれる存在だったケンドーコバヤシの自信満々な態度は、芸人になってからも全く変わらなかった。 「過激でしたね。自分でも思い出したくないくらい過激だった記憶があります。昔は肉体も精神も若かったし、まずは本当にやりたいことをむちゃくちゃ出していたんでしょうね。リミッターを自分の中に作っていなかったんです」
だが、そんな無軌道な大阪のローカル芸人が、上京してからはなぜかお茶の間の人気者になってしまった。だが、本人としてはそこに格別の変化は感じていない。 「単にお願いされることが変わってきたからじゃないですか。お願いされることが増えたら、それをまっとうせなあかんというのがあるだけです。昔は誰も俺にお願いなんかしてくれなかったですからね」 しかし、どんな状況でも芸人として果敢にボケていく姿勢は崩さない。『ゴゴスマ』(CBCテレビ)のコメンテーターをやっているときには、どんな真面目なニュースに対してもふざけた態度で臨む。昨年の闇営業騒動のときにも、すべての話題に対してひたすらボケで返し続けて話題になった。 「これはもうどうしようもないんです。だから冠婚葬祭とか向いてないと思いますよ。肉親の葬式で親族として皆さんを迎え入れるとき、お辞儀をしながら下で白目むいてたりしますからね(笑)。自分でも良くないと思っていてもやっちゃうから、褒められたもんじゃないです」
「Mr.やりたい放題」唯一の脅威は渡部
現在では、深夜のお色気バラエティー『ケンコバのバコバコテレビ』(サンテレビ)や、出演依頼を受けた際には「企画案のほとんどが実現不可能なのでは?」と本人も危惧した『ケンドーコバヤシの絶対見ない方がいいテレビ』など、マニアックな趣味嗜好を生かした仕事も増えている。 幅広い仕事を任されて期待に応えることには素直にやり甲斐を感じている。 「用心棒的な感覚というか、お願いされることは好きなので、どんな仕事が来ても基本的にはやりますね。あと、真面目な仕事は次の仕事のための『振り』になるじゃないですか。だから、こんな仕事やりたくないとか言っている若者を見ると、もったいないなと思います」 そんなやりたい放題で無敵の男・ケンドーコバヤシがいま唯一、脅威に感じている人物がいるという。