「絶望的につまらない時代」ーー“Mr.やりたい放題”ケンドーコバヤシの流儀
プロレスや漫画などのマニアックな小ネタや、大胆不敵な下ネタで笑いを取ることを得意としているケンドーコバヤシ。ウソか本当かわからないボケを真顔で堂々と言い切り、爆笑を巻き起こす彼は「Mr.やりたい放題」の異名を取っている。「人を傷つけない笑い」が支持を集め、芸人自身も「いい人」であることを求められる昨今の風潮は、彼のような昔気質の芸人にとって逆風であるように見える。そんな時代をどのように生き抜いていこうとしているのだろうか。(取材・文:ラリー遠田/撮影:栗原洋平/Yahoo!ニュース 特集編集部)
いまは「絶望的に退屈」
「ちょっとエッチなものや怖いものをテレビで見られなくなって、子供の頃の僕のようなマセガキ(ませた子供)がもう出てこなくなるのかと思うと、一抹の寂しさはありますね。まあ、逆に(ネット配信などの)別の形の番組も増えているし、自分ではあまり気にはしていないです」 テレビで過激なことができなくなっているのはもちろん、芸人に求められることも年々変わりつつある。世の中の芸人観そのものが急速に変化していることには戸惑いも感じている。 「お笑いコンビは仲良くないとダメだとか、芸人はいい人じゃなかったらダメだとか、とにかく絶望的につまらない時代になっているな、とは思います。僕がデビューした頃の芸人って、言葉は悪いですけど『ならず者』みたいなやつしかいなかったですからね。養成所は少年院みたいな雰囲気でした。それが刺激的で面白かったし、そういうやつらに対して自分も『負けへんぞ』と思っていたんです」
笑いの世界では昔から「芸人は人前で努力を見せるものではない」と言われてきたが、そんな美学もいまや時代遅れになりつつある。お笑いコンテストなどの舞台裏にカメラが入り込み、壁に向かって必死で漫才の練習をする芸人の姿が放送されることも多い。 「僕はそういうのは恥ずかしいことだと思っているので、あの風潮がある限りネタなんかやめとこうと思っています。今はメディアがそれを撮りたがるし、視聴者もそれを見たがりますからね」 今のお笑い界では第7世代と呼ばれる若手芸人たちが活躍している。彼らは人前でも努力を隠さず、ピュアにお笑いに向き合い、相方への愛と感謝を臆面もなく語ったりする。 「マジかこいつら、と思いますけどね。俺からしたら、格好悪いというより、なんちゅう卑怯なことするんや、こいつらルールないんか、っていう感じです。そういう意味では第7世代は怖いですね。俺は感覚が追いついていないというか、ずれているのかもしれません。まあでも、こんな俺が好きなやつもいるだろうとも思います」