「絶望的につまらない時代」ーー“Mr.やりたい放題”ケンドーコバヤシの流儀
彼が生きてきた時代とは何もかもが違っている。だが、そんな若手の中にも昔ながらの芸人魂を感じさせる者もいる。 「(霜降り明星の)せいやはたぶん、俺らと同じ時代にいてもこういうやつだったんだろうな、と思いますね。アホやと言われたがっているというか、後ろ指さされることが嬉しいと思ってるんじゃないかなというにおいがするんです」
ファンタジーの包装紙でくるむ「下ネタ」
下ネタやエロネタなど何でもありのやり方で笑いをもぎ取るケンドーコバヤシには過激なイメージもあるが、本人の中では道を外れたことをやっているつもりはないという。 「僕の場合、過激であればあるほど、自分に刃が向くようにしています。人を笑わせることに目覚めた幼稚園ぐらいの頃から、意識して他人を傷つけるジョークを言ったことはないです。最近は『人を傷つけない笑い』が流行ってますけど、そんなの俺は30年くらい前からやってますよ。誰にもそう思われてないだけで」
確かに、よくよく聞いてみると、ケンドーコバヤシの下ネタは最終的に自分をネタにして落としているものが多い。他人を貶めて笑いを取るのは彼の流儀に反する。さらに、下ネタを効果的に聞かせるための彼なりの工夫もある。 「これってホンマなんかな、もしかしてウソちゃうかな、と思わせなあかんとは思ってます。ちょっとファンタジーとして話すように加減はしています。結構ホンマなんですけど(笑)」 確かに彼の下ネタには悪い意味での生々しさがなく、女性でも気楽に笑えるようなところがある。えげつないものをファンタジーの包装紙でくるむことで、万人受けする形にして提供しているのだ。そもそも、普段から意識して「下ネタを言おう」と思ったことはない。 「エロいこととか下ネタを言ってやろうと思って言うことってほぼないんですよね。1つの話題で何か笑いを入れなあかんっていうときに、調子がいいときだと10ぐらいの選択肢が頭に浮かぶ。そこから面白いと思うものを選ぶと、自ずと下ネタも出てくるだけなんです。実は下ネタなんて全体の3割も言ってないと思いますよ」