「忘年会に参加したら残業代出ますか?」社労士が飲み会と労働時間の関係を解説してみた。(久保田慎平 特定社会保険労務士)
■会社としてどのような準備をしておくべきか
忘年会や新年会に話を戻すと、会社の公式行事として忘年会を実施するのか、各部署などの判断にゆだねるか立場を明らかにしておくことが考えられる。公式行事として開催するのであれば当然労働時間として実施するべきだが、有志による開催とする場合にはあくまでも自由参加とし、参加を強制する言動は禁止する旨を徹底しておくことが重要だ。 業務時間とはならない飲み会であっても飲酒を強要したりお酌をさせたりなどハラスメントにならないよう特に上下関係の視点から管理職を中心に指導しておきたい。
■忘年会に参加したくないのは日ごろのコミュニケーションも影響する
労働時間に当たるかどうか、という議論から少しずれるが「忘年会に参加したら残業代は出るか」という質問が出るのは、日ごろのコミュニケーションに問題があると考えることもできる。もちろん、その人自身が忘年会などの飲み会が好きではないこともあるかもしれないし、ワークライフバランスやプライベートを重視する人も増えている。 しかし「この人と話をしたい」「この人と話すと楽しい」と感じていれば「誘われたから参加する・参加したい」となるのは不自然なことではない。参加に後ろ向きの発言が出るのは日ごろの接し方に問題があるのかもしれない、という考え方もできる。 それが急に忘年会シーズンになったからと誘われても良い気持ちがしないのは想像に難くない。曖昧な話に聞こえたかもしれないが、これは労働時間か否かというこれまでの説明とは別にハラスメントとしての視点、アルコールハラスメント「アルハラ」とも言われるような論点だ。 飲み会が好きな人もそうではない人もいる。相手のことを尊重し無理をさせないことが重要だ。そして強制参加にならない言い回しを考えるだけでなく、日ごろのコミュニケーションを見直すことも大切だろう。 久保田慎平 社会保険労務士法人GOAL 代表社員・特定社会保険労務士
【プロフィール 久保田慎平】
2011年4月に都内の社会保険労務士事務所へ入職、4年間の実務経験後、2015年4月独立開業。2018年9月に行政書士法人GOALと合流し、社会保険労務士法人GOALを設立。東京・神奈川・埼玉・千葉の中小企業を中心に企業型確定拠出年金(DC/401k)の導入支援や人材の採用・定着支援、クラウドシステム導入支援、労務トラブル防止、企業研修による人材育成に力を入れている。就業規則の関与実績約300件、商工会議所や金融機関等のセミナー講師や執筆業も実績多数。1983年8月横浜生まれ、横浜育ち。