フランス市場混乱、ECB当局者は警戒すべき理由ないと認識-関係者
(ブルームバーグ): フランス市場を襲ったここ数日間の混乱に警戒すべき理由はないと欧州中央銀行(ECB)当局者はみている。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
今週の混乱でフランスとドイツの10年債利回り格差(スプレッド)は週間ベースで過去最大の拡大を記録。フランス株の時価総額は合計2000億ドル(約31兆4500億円)減少した。
非公表の協議内容だとして匿名を条件に述べた同関係者によれば、それでもECB当局者の見方では混乱は抑え込まれている。14日時点で危機対応ツールの活用にについては検討すらされていないという。
ECBの報道官はコメントを避けた。
欧州議会選挙で仏与党はマリーヌ・ルペン氏が実質的に率いる極右政党の国民連合(RN)に敗北。マクロン大統領は総選挙の実施を表明した。これを受け、市場では動揺が広がった。動揺はイタリアにも飛び火し、同国債とドイツ債のスプレッドも拡大した。
混乱が収拾不能に陥り、いずれかの危機対応ツールの活用検討を強いられるようになれば、ECBにとっては厳しい局面になる。フランスは域内第2の経済大国であり、その経済規模から前例にない大きさの介入が必要になる可能性もある。
ECBは2010年代のソブリン債務危機の経験があるため混乱には慣れているが、緊急行動が必要になる事例は減っている。
直近では2022年6月に発生したイタリア債の急落に対し、ECBは極めて速やかに行動した。
当時はラガルド総裁が滞在していたロンドンのホテルの地下室から危機対策会議を開催。ユーロ圏債券市場の分断化を防ぐための新たな危機対応ツール「トランスミッション・プロテクション・インスツルメント(TPI)」で合意を取り付けた。
TPI創設と他の措置の存在が、ECB当局者に楽観を保ち、余裕を持って見ていられることを可能にしている材料の一つかもしれない。
最近の混乱でTPIが発動されるとはみられていないものの、この発動条件を巡る議論が投資家やアナリストの間では再び活発化している。