[猫学47回目]文学と遺伝学と猫学と――初の猫学フォーラムでにゃんこを論じる(下)
そんな穂村さんですが、ついにペット飼育可のマンションに引っ越し、子猫を迎え入れたのは昨年7月のこと。アメリカンショートヘアのブリーダーから子猫を譲り受けました。もともとは保護猫の譲渡会で猫を探そうとしましたが、60歳を過ぎた飼い主はあまり歓迎されないという、主催者側の思いが壁になったそうです。 「先方は遠慮してはっきり口にしないのですが、言葉をどう選んでも、あなたが先に死ぬかもですよねと私は言われているわけです。いつか電車で席を譲られる日が来るだろうと、譲られてもショックを受けずにお礼を言えるようにと心の準備をしていたつもりですが、予想外に早く、自分の年齢を意識させられました。まさか猫を飼うときにそうなるとは思いませんでしたけど」
「かわいい」の言葉しか出てこない
口の中を猫に踏まれて飛び起きるどうやって口の中を踏んだ? うっとりと聞いているからこの猫は賢治が好きと妻は真顔 ひるねという名前は、ブリーダーを訪ねた際、どの子猫よりもよく寝ていたため奥さんが名付けたそうです。 「私は子猫の見た目から、くまはどうか、と提案したんです。妻から一秒で却下されまして、ひるねとなりました。子猫は昼寝するのが当たり前ですから、それを理由に名付けるなら、ひるねちゃんという猫だらけになりそうですけどね」
穂村さんはひるねを通じて、猫のかわいさに改めて気づかされたそうです。と同時に、次のような出来事が思い出されたといいます。「小説家や詩人や歌人などが集まる機会があり、その会場となった家に、猫がいたんです。すると、全員が猫を見て、かわいい、かわいい、としか言わないんですよ、物書きの集まりなのに。いざ猫を前にすると、日本を代表するような作家でも、かわいい、としか口から出ないという事実を目の当たりにして、猫の凄(すご)さを知りました」。そんな穂村さん自身も、ひるねにはつい、かわいいね、という言葉ばかり口から出てしまうのだとか。 穂村家はひるねが加わり、3人家族となりました。ひるねは奥さんのことが一番に好きで、奥さんも自分の子供のようにひるねをかわいがり、遊びには体力が続く限り付き合うのだそうです。 ねこじゃらし手にもったまま眠ってる人間ばかり猫は起きてる 三者面談で進路を話し合う仔猫の夢は覆面レスラー