目立ちたくない!?『淡い顔メーク』 薄い眉や「忘れ鼻」を作るZ世代 近ごろ都に流行るもの
黒い眉毛を消す眉マスカラや、印象に残らない鼻に見せる「忘れ鼻」などの「淡い顔メーク」が流行している。かつてのギャルのような〝盛り〟は影を潜め、バサバサしたまつげなどはNG。自然に見える「はかない」雰囲気が追究されており、化粧の難度はより上がっている。淡い顔づくりの化粧品がヒットしている背景には、空気を読んで目立つことを避けるZ世代の若者(1990年代中盤~2010年代前半生まれ)の意識があるという。 【写真】薄い眉に薄いピンクのメークをした韓国人モデルのカンテリさん。「淡い顔メーク」のお手本のひとつだ ■化粧から読み解く意識の変遷 大手百貨店の化粧品オンラインストアで気になるコラムを見つけた。「悩み別 忘れ鼻の作り方」 シェーディングの陰影で鼻を小さく見せるメーク技術を図解している。鼻尖形成や小鼻縮小という美容整形手術のハードルも下がっているようだが失敗のリスクがあり、整形疑惑のある有名人がネットにさらされている日本社会においては、化粧品で理想形に近づけるくらいでよいと思う。 「キスうす眉メーカー」(1100円)は、眉毛を肌色に近づけて存在感を消す眉マスカラだ。昨年9月の発売以降、人気に製造が追いつかず欠品が続く。「韓国アイドルのメークが流行していますが、韓国女子は日本女子に比べて眉毛が薄く見える傾向がある」と、キスを展開する伊勢半商品開発部の金子裕美部長(41)が指摘した。 同社には眉マスカラでシェア1位の「ヘビーローテーション」ブランドがあるが一昨年、圧倒的1位の定番色の茶色を薄いアッシュ(くすみ灰色)系が逆転し、その傾向は競合他社を含め加速しているという。 ヘビーローテーションが発売された平成20年は、ファッションビル「渋谷109」に象徴されるギャル文化が継続中で、金髪に合わせて眉の色を変えられると重宝された。16年を経て、若者の意識変化が眉にも表れているようだ。 伊勢半ではZ世代を招いての座談会を実施しているが、「建前を重んじ、空気を読んで目立つことを避け、調和を大切にする意識が強い。眉は感情を表すパーツなので、薄く隠して本音を読み取られたくないという思いもあるのではないか。コロナ禍が明けた頃に若者の間で起きた、『マスクは〝顔パンツ〟だから外したくない』という心理ともつながっていると思います」と金子部長。 今のキーワードは色彩を抑えた「はかなさ」と「透明感」。「バブルの頃の太眉やギャルの盛りメークには『これが私』という強さや主張が表れていた。今は、男女の力関係もフラットになりつつあり女性が外見で武装する必要もなくなった」と分析する。うす眉メーカーの利用者には、黒々とした眉に悩む男子もおり、化粧にもジェンダーレス化が進んでいる。