欧州在住の長友佑都が切実警鐘「怖いのは医療崩壊」
感染者の診察にあたるには防護マスク、全身を覆う防護服、顔全体を覆うフェイスシールド、そしてゴム製の医療用手袋を装着。目に見えないウイルスを完全に遮断しなければならない。しかし、原則では使い捨てとせざるをえない一連の医療用品が、現状では圧倒的に不足している。 どれかひとつでも欠ければ、医療従事者をして「武器なしで戦う」と言わしめる状況が生まれる。2次感染だけでなく病院内でクラスター(集団感染)が発生する、いわゆる院内感染を引き起こすリスクが一気に高まる。院内感染が複数の箇所で起こった地域から、医療が崩壊していくことになる。 「医療に従事している方々が新型コロナウイルスに感染しない、あるいは負荷のかかり過ぎによる疲弊をさせない状況を作らなければいけない。もう待ったなしの状況に来ていると思っています」 田嶋会長は逼迫した状況とともに、感染者だけでなく、携わる医療従事者やその家族に対しても偏見や差別が起こっていると訴える。身体的な疲労に精神面での悩みやストレスが加われば、その分だけ疲弊して免疫が下がり、感染するリスクが増幅される事態を生み出す。 イタリアからの報告によれば1万4000人を超える医療従事者が新型コロナウイルスに感染している。長友がつぶやいた「1人1人の自覚ある行動」には不要不急の外出を控えるだけでなく、偏見や差別に加わらないことも含まれているはずだ。 大阪府の吉村洋文知事は緊急事態宣言の対象地域となっている、大阪を含めた7都府県に医療用品を優先的に供給してほしいと政府へ要望している。防護マスクや防護服に関しては府の備品に在庫がなく、自治体レベルで新たに調達することも難しい状況にあるという。 医療従事者用のサージカルマスクに関しては、すでに約100万枚が届き、今週末までに約90万枚が追加で国から配布される予定だが、大阪府だけで1ヵ月に数千万枚が使われる需要には遠く及ばない。 特殊な縫製技術を要する防護服に至っては、欠航が相次いでいるANAグループが客室乗務員(CA)や空港職員を中心に縫製作業を支援するという、ちょっと理解に苦しむ方針を安倍晋三首相や特別措置法を担当する西村康稔経済再生担当相が言及している。 (文責・藤江直人/スポーツライター)