宇宙惑星探査ミッションは探査車から探査ヘリの時代へ
火星探査車パーサヴィアランスが火星に到着したのは2021年のこと。現在も火星をコロコロと動き回っています。 【全画像をみる】宇宙惑星探査ミッションは探査車から探査ヘリの時代へ そのパーサヴィアランスと一緒に火星に到着したインジェニュイティ。こちらは、探査車ではなく探査ヘリ。小型のロボットヘリコプターでした。今年1月、ブレードの損傷が確認され、運用が終了しました。 インジェニュイティは想定よりも高い高度で長く飛行し、運用期間も予定より長くなりました。 惑星探査は人類にとって難関なミッションながらも、インジェニュイティの3年間の活躍によって、小型ロボットヘリによる惑星探査の道は大きく開かれました。
探査車から探査ヘリへ
人類が初めて月面に降り立ったのが、1969年。1970年には金星に軟着陸。以来、技術の進化とともに惑星探査も進んできました。1997年のパスファインダー計画のソジャーナが火星に着陸する前、1971年から1976年に間に火星着陸に成功したのは3回。2005年には、土星の衛星タイタンにホイヘンスが着陸。 NASAの火星探査ローバー、スピリット、オポチュニティ、キュリオシティ、そしてパーサヴィアランスは、技術とデザイン進化で、地表をより長い距離移動することに成功しました。 そして、ついにインジェニュイティで空を飛びました。 じつは、他惑星を飛行したのはインジェニュイティが初ではありません。 1985年、ベガ1号&ベガ2号ミッションとしてバルーンが金星上空を飛行しました。しかし、大きく異なるのは、インジェニュイティは制御可能であったこと。カメラも搭載されており、通信も可能でした。 インジェニュイティは、搭載されたカメラでローバー、パーサヴィアランスを撮影。今までみたことがない角度から火星を捉えることができました。一方、パーサヴィアランスも飛行するインジェニュイティの動画を撮影。惑星探査に新たな視点が加わりました。
インジェニュイティの大成功
2012年、欧州宇宙機関(ESA)が牽引する火星探査ミッション「エクソマーズ」からNASAは撤退。結果、アメリカは自前で探査ミッション「マーズ2020」、探査車開発を行うことになりました。 後にパーサヴィアランスと名付けられた探査車は、発表からコンセプト、開発、打ち上げするまでに7年半を要しました。 ミッションに同乗したインジェニュイティですが、当初の予定にその存在はありませんでした。マーズ2020ミッションにおいて、後半にでてきたアイディアであり、その計画の複雑さ、コスト、リスクなどから猛反対にあいました。が、科学とエンジニアリングの進化を一般に伝えるチャンスとしてGOサインがでました。 火星の大気での飛行をテストする、インジェニュイティの目的はそこにあり、長期運用する予定はありませんでした。 着陸失敗したらどうする? 転げても起き上がれる? ソーラーパネルが塵に埋もれたら電力なくなるぞ? 探査車から離れすぎたら通信きれるぞ? テストしてみたい懸念事項は盛りだくさん。 1ヶ月ほどの運用で5回飛行テストできたら十分だ…。 火星に降り立ったインジェニュイティ。結果、運用期間3年、フライト回数72回という想定を大きく超えた大快挙となりました。