米国債上昇への賭け、急速に巻き戻す動き-FOMCとCPI控え
(ブルームバーグ): 二つのリスクイベントを12日に控え、トレーダーは米国債相場上昇を予想した賭けを急速に巻き戻している。同日には5月の米消費者物価指数(CPI)が発表されて、その数時間後には連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策決定が公表される。こうした発表が同じ日に重なることは珍しい。
米CPIとFOMC、ダブルのボラティリティー要因に市場が備える
27兆ドル(約4240兆円)規模の米国債市場に関する先物ポジションのデータによると、米当局者が高めの金利を長期間維持するとの予想が、金融緩和サイクル開始を巡る楽観論より強い。
こうした流れは、雇用統計で労働市場の想定外の力強さが示されてから数日間に勢いを増している。7日に発表された同統計は、米国債値上がりと年内の複数回の利下げに備えていたトレーダーを動揺させた。統計発表後に10年債先物の建玉(未決済約定)は約8万枚減少しており、トレーダーが強気の賭けを解消しつつあることを示唆している。
今は、年内の利下げが1回にとどまるとの予想が市場に完全に織り込まれつつある。12日には、市場予想リセットにつながり得るCPI発表から、わずか数時間後にFOMC決定が公表される。新たな四半期経済予測の金利予測分布図(ドット・プロット)も、市場を揺さぶりかねない新たな情報を提供する。
マニュライフ・インベストメント・マネジメントのマルチアセット・ソリューション担当グローバル最高投資責任者(CIO)兼シニアポートフォリオマネジャー、ネイサン・トホーフト氏は「いずれの方向でも大きく賭けた状態で今回の会合を迎えたくはない」とした上で、「米金融当局がいつ、どの程度行動するかが不透明なことが主な要因となり、全般的にわれわれの賭けは今年、スケールダウンしている」と語った。
「構造的に中立」
高めの金利が長期間続くとの見方が勢いづいていることは、米国債の現物市場でも見て取れる。11日に公表されたJPモルガン・チェース米国債顧客調査では、投資家のネットロング・ポジションが2カ月ぶりの低水準となった。7日の雇用統計発表前には一時4.27%まで低下していた米10年債利回りも、今週初めに4.48%近くまで上昇した。