エレクトロニック・ユニット、キアスモス(Kiasmos)が語る――10年振りの新作、そして音楽と自然の関係性について
オーラヴル:場所が音楽に与える影響はとても大きい。アイスランド、日本、バリ島など、演奏する場所によって生まれる音はまったく異なるし、同じ楽器であっても場所が変われば奏でられる音楽は違う表情を見せる。それは、自然の景色だけでなく、その場所の空気感や聞こえる音、そしてそこに身を置いたときの感覚が音楽に大きな影響を与えるからだと思う。
ヤヌス:僕が個人的に自然の音に惹かれる理由は、音はどこから生まれ、なぜ僕たちが音楽や自然を美しいと感じるのかという根源的な問いに対する探究心が強いからだと思う。僕たちが奏でる音楽は複雑なアレンジやテクニックを用いて作られているけど、その根源には、自然のリズムや鳥のさえずりなどシンプルな自然の音がある。つまり音楽の多くには、自然を模倣している側面があると思う。だから結局、僕たちの音楽も分解してみればただの自然の音なんじゃないかな。音楽と自然は、けっして切り離すことのできない、密接な関係にあると信じているよ。
――なるほど。ただ、あなたたちの音楽は、単に自然の音を書き写そうとしてやっているものではないですよね?
オーラブル:そうだね。それよりもフィーリングが大事なんだ。
――例えば、コロナ以降、アンビエントなどのエレクトロニック・ミュージックはセラピーや瞑想、マインドフルネスを促すものとして特に求められている傾向があるように感じます。自分たちの音楽にもそうした“効能”があると思いますか。
ヤヌス:僕たちの音楽が好き人は、さまざまなシチュエーションで、それぞれのスタイルで楽しんでくれている。料理を作りながら聴く人もいれば、ヨガや瞑想をしているときに聴く人、ビールを飲みながらパーティーで踊っているときに聴く人もいる。本当に人それぞれだと思う。僕たち音楽家は、単に音を重ね合わせるだけでなく、聴く人々に何かを感じてもらうために音楽を作っている。聴く人が何を思うかは自由で、メロディーを紡いでいく中で、音楽が自然と感情を呼び起こす瞬間があることに気づかされる。少しメランコリックな気分にさせる曲もあれば、高揚感を与える曲もある。ただ、それはけっして意図的なものではなく、音楽が持つ自然な力なんじゃないかな。だからどんな瞬間にも、僕たちの音楽が寄り添えることを願っているよ。