エレクトロニック・ユニット、キアスモス(Kiasmos)が語る――10年振りの新作、そして音楽と自然の関係性について
オーラヴル:音楽はマインドフルネスや瞑想の一種であり、それが“音楽を聴く”ということなんだと思う。ジャズ、アンビエント、ダンス・ミュージック、どんなジャンルも関係ない。大切なのは、音楽に心を委ね、その瞬間に没頭することなんじゃないかな。
――ちなみに、キアスモスのコンセプトは「ダンス・フロアで泣かせること」だと読みました。それも一種のセラピーだったり、マインドフルネスへの働きかけを意識してのことだったりするのでしょうか。
オーラヴル:まあ、それは冗談で言ってるところもあるんだけどね(笑)。
ヤヌス:僕たちのライブに足を運んでくれる人の中には、僕たちの音楽を静かなものだと捉えている人が多いみたいなんだ。アルバムによっては、激しい曲よりも落ち着いた曲が中心のものもあるから、そう思われているのかもしれない。だから実際にライブに来ると、クラブで観客が踊り狂うような激しいパフォーマンスをしていることに驚くみたいで。エモーショナルでありながら多幸感溢れるライブを目指しているから、時には涙を流しながら踊っている観客の姿を目にすることもある。僕たちのライブでは、さまざまな感情的な体験を提供したいと思っているんだ。静かに音楽に耳を傾けたり、時には涙を流しながら踊ったりと、それぞれがさまざまな形で音楽を楽しんでくれたらって思っているよ。
――ここまで話してきたことともつながるかと思いますが――最後に、昨年亡くなった坂本龍一さんについてコメントをいただけますか。特にオーラヴルさんは坂本さんと共演もあり、その影響について公言されてきましたが、あらためて、坂本龍一という音楽家はオーラヴルさんにとってどんな存在でしたか。
オーラヴル:実は今朝、そのことについてたっぷり喋ってきたばかりなんだ(笑)。それはともかく……彼の音楽は、クラシック楽器を巧みに使いながらも、どこかエレクトロニックな雰囲気が漂っていて、従来のクラシック音楽の概念を覆すような、新鮮な驚きを与えてくれるものだった。12~14歳のころ、クラシック音楽といえばオーケストラや伝統的な楽器で演奏されるものだと信じていた僕にとって、彼との出会いは音楽に対する固定観念を打ち破る衝撃的なものだったんだ。音楽の境界線を超えて、新たな可能性を切り開いてくれるようなね。だから彼を見つけたことは本当に大きな発見だったし、彼の音楽はまったく新しい音楽の世界へと僕を導いてくれるきっかけだったんだよ。