「ハニワと土偶の近代」(東京国立近代美術館)開幕レポート。戦前から現代まで、出土遺物への視線はなぜ、どのように変化した?
キャラクターとして大衆文化に浸透していく
「ほりだしにもどる――となりの遺物」と題された最後の章では、埴輪や土偶が現代にかけてさらに大衆文化に浸透していく様が紹介される。とくに1970年代から80年代にかけては、SF・オカルトブームとも結びつき、特撮やマンガのなかで古代の遺物に着想を得たキャラクターが多数登場する。 1960年代につくられた大映の特撮映画『大魔神』三部作は、戦国時代を舞台にした物語だが、魔神のデザインは国宝の埴輪《挂甲の武人》がモデルとされている。60年代から90年代にかけての埴輪や土偶とサブカルチャーの関連を辿る「ハニワと土偶とサブカルチャー年表」を見ると、特撮やマンガ、アニメ、ビデオゲームなどにおいて、武人埴輪は勇ましい主人公、土偶は恐ろしい敵など、用いられるイメージに傾向があることもわかる。 さらに1983年~89年にNHK教育テレビで放送された幼児向け番組『おーい!はに丸』の映像も紹介。会場外にははに丸と写真が撮れるフォトスポットも設置されているほか、本展の音声ガイドナビゲーターは、同番組ではに丸の声を演じ、『ONE PIECE』のルフィなど多くの人気作への出演で知られる声優の田中真弓が担当している。 そして最後に、埴輪や古墳、古代の文化に独自の視線を向ける現代作家の作品として、藤浩志、衣真一郎、田附勝の作品が紹介され、本展を締めくくる。 多くの人が子供の頃に教科書で習う身近な古代の存在である埴輪や土偶。過去の人々がどのようにそれらを見つめ、どんな時代の要請を受けてその受容が変化してきたのか。本展は知っていたつもりの埴輪や土偶を新たな視点で見つめ直すきっかけを与えてくれる。本物の埴輪が多数展示される、「挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展『はにわ』」展(東京国立博物館、10月16日~12月8日)とあわせて鑑賞したい。
Minami Goto