「全校生徒の投票先、実は〝筒抜け〟になってます」生徒会選挙で驚きの事実 「投票の秘密」の侵害、教育デジタル化が招く
2016年に選挙権年齢が18歳以上へ引き下げられ、一層生徒会選挙の「主権者教育」の重要性は高まっている。高橋理事長は現状を改善する必要があると考えている。 「本来、生徒会選挙は教員ではなく生徒が管理するべきものだ」 生徒会は、中学校や高校に置かれる生徒による自治的な組織。学校生活の改善や社会参画活動に取り組む。学習指導要領によると、学校生活の充実と向上を図るための諸問題の解決に向け「自主的、実践的」に取り組み、資質を育むことなどが目的とされている。 会長ら役員は原則として全校生徒による投票で決定する。軍国主義的な教育に対する反省と民主的な市民育成のため、戦後に連合国軍総司令部(GHQ)の関与の下、各地で活動が盛んになったが、その後は低迷しているのが現状だ。 ∇生徒会選挙は「民主主義の疑似体験」 専門家は現状をどう見ているのか。 日本大の岩崎正洋教授(政治学)は、手軽に投票できるICT選挙自体は好ましいと指摘する一方で懸念もあるとみている。
「誰が誰に投票したか分かる状態では『選挙』ではない。学校の現場で民主主義に対する感覚が薄まっているのでは。問題を放置すれば、電子投票を国政選挙に導入する際、政府が国民を秘密裏に監視しているのではという疑念を生む」 鹿児島大の小林元気准教授(教育社会学)は、生徒会選挙が生徒にとっての「民主主義の疑似体験」と説明する。 「自ら選挙のプロセスを経験することが大事で、主権者教育と密接につながっている」と指摘。「新たな情報技術を用いた教員業務の効率化は検討されるべきだが、アプリの利用に伴い、投票先を教員側が把握できる事態を招いたことは残念。放置すれば、民主主義下での選挙の原則である『秘密選挙』は大して重要ではないと、誤って生徒に理解、学習されてしまう恐れがある」 ∇投票の秘密、どう守るか 生徒会選挙で使われたアプリを開発した企業の担当者は、誰が誰に投票したかを匿名化する機能はないと説明する。アプリの機能は「教員と生徒が使い方を探っていくことが前提だ」。