「全校生徒の投票先、実は〝筒抜け〟になってます」生徒会選挙で驚きの事実 「投票の秘密」の侵害、教育デジタル化が招く
「教員側が(各生徒の投票内容を)確認できる状態になっていたことは事実」 大分市の別の学校の教員は、アプリを使うようになった理由を明かす。「作業を楽にして教員の負担を減らすことが目的だった」。投票用紙を使うこれまでの方法では、開票作業に手間がかかるから、とも説明している。 宮崎市の公立中学でも、少なくとも2校が同じ教育支援アプリを使って生徒会選挙をしていたと明らかにした。うち1校は今年初めて利用したものの、来年度からは従来通りの「紙方式」に戻すという。この学校の担当者は「秘密選挙の原則を教える立場なのに、認識不足だった」と話した。 福岡市のある私立高校は、このアプリを7~8年前に導入した。その後、新型コロナウイルス禍を受けて、生徒会選挙でも数年前から使うようになった。「開票作業が迅速化した」ため、今後もアプリを使うという。学校側によると「誰が誰に投票したかは、システム担当の教員以外は把握しないようにしている」
一方で、別のシステムを使っていた大分市のある学校の担当者は、生徒の投票内容を把握していたと明かした。目的は「二重投票を防ぐためだった」。 ∇背景に「生徒会の軽視」 秘密投票の原則は、憲法に規定されている。生徒会選挙でも投票の秘密を守る大切さはどこにあるのか。生徒会活動支援協会の高橋亮平理事長はこう説明し、憤った。 「学校内という限定的空間とはいえ、本物の民主主義を学ぶ場なのに」教員側が意識せず、「悪気なく」続けている点も問題視。その理由の一つとして「教員が、生徒会を軽視している」ことを挙げた。 一方で、生徒会選挙が「選挙の体をなしていない」という面もあるのは否めない。 高橋氏と千葉市教育委員会が2015年以降、千葉市内の全市立中55校に実施した調査によると、生徒会長を選ぶため競争選挙が実際に行われていたのは4校だけ。大多数は信任投票で、選挙と銘打っていても実質的には形骸化していた。