ポケトークが「鬼門のアメリカ」でつかんだ自信 苦難続く日系ITスタートアップの活路となるか
ビザスクは5月末の株主総会で、買収先であるコールマンの創業者と、日本側で買収を主導し、会社のナンバー2でもあった瓜生英敏氏がともに取締役を退任する見込みだ。 いずれの会社も事情がさまざまで、アメリカ事業苦戦の要因は1つではない。ただ一般に言われるような言語の壁やアメリカと比べたベンチャーキャピタルの層の厚さなど、日本企業が克服すべき要因は多い。そうした中で、スマートニュースの鈴木健会長(当時社長CEOを兼任)は、2022年9月から自身がカリフォルニア州に移住するなど、挑戦を続けている。
■個人利用中心の日本での拡大が課題 アメリカにおける四半期黒字化を成し遂げたポケトークとて、決して安泰ではない。 親会社ソースネクストの2024年3月期は、日本のポケトーク事業を中心とする開発人件費増加などにより、3期連続の営業赤字になっている。さらなる外部資本の活用を進めるとしても、親会社の支えがなくポケトークとして十分な投資ができなければ、盤石な成長ストーリーは描けない。 今はアメリカが先行して収益化しているが、日本でも大型の法人受注を増やすなど、日米両輪での成長が必要となる。個人利用が中心の日本市場においては、アメリカで提供を始めた顧客の分析・管理ツールを「ポケトーク アナリティクス」として拡販し、公共機関や大手企業の導入獲得を目指す。
専用端末としての魅力をいかに高められるかも課題だ。端末料金はポケトークSが249ドル(日本は3万2780円)、ポケトークプラスが299ドル(同3万4980円、名称はポケトークSプラス)となっており、無料でダウンロードできるスマートフォンアプリと費用面で割高ではないかと比較されることが多い。 この点について松田氏は「(主にアメリカで)スマホの使用を禁止する学校や非推奨とする場所が多いほか、個人のスマホを使用するのは、情報を抜き取られる恐れなどプライバシー保護の観点でも問題がある。また、複数人で端末を利用する病院などでは10万円以上するスマホよりも専用端末のほうが安価であり、ポケトークに対するニーズは高い」と語る。