大学の不祥事、倒産、オンライン大学創設……いま職員の世界に激震が起きている!
◆大学側の不適切な発言、指導などがしばしば問題に ――教職員や経営陣が起こす不祥事には、どんなケースと対応がありますか? 教員ではアカデミックハラスメント(アカハラ)やパワハラ、セクハラ、ほか不適切な発言や指導などがしばしば問題になります。研究費などを不適切に流用して報道されてしまうケースもありますね。教員と学生との間でトラブルや不祥事が発生した場合、学科長や学生部長などの教員や学生支援部門の職員が学生およびその保護者との間に入り、解決のために奔走することになります。教職員の間でのトラブルなら、人事部門やハラスメント対応部門の教職員が必要な対応を行います。こうした事態が起きないよう、多くの大学では「これはアカハラに該当します」といったことを学ぶ研修を、総務・人事部門が教職員に対して企画しているはずですが、そうは言っても起きるときは起きてしまいます。 論文の剽窃など研究に関する不正を学生や教員が起こした場合は、教員を中心に対応が検討されます。場合によっては学位の取り消しのように、社会的にも影響が大きな決定を下すことも。こうなると、関係各所に対する手続きも必要になってきます。 学長や理事長といったトップの方が教職員に対するハラスメント行為や、経営上の不正行為を行い、大問題になるようなケースもあります。不祥事と言えるかはケースバイケースでしょうが、不当な降格や解雇といった労働問題によって教職員から法人が訴えられるケースもしばしば起きています。こうした場合は企業と同様、人事部門の職員が対応に追われることになるでしょう。労働争議を抱えている法人は珍しくなく、人事部門の職員はなかなか大変です。 いずれのケースでも、広報部門はメディア対応や情報発信に追われることになります。
◆大学のガバナンスのあり方について ――日大は悪質タックル事件も今回も、理事会の混迷ぶりが漏れ伝わってきます。なぜガバナンスが機能しないのでしょうか? 日大の詳細を知る立場にないので断定的なことは言えませんが、日大に限らず、大学のガバナンスのあり方については様々な意見があります。一般論として、最高意思決定機関である理事会の役目は、法人全体の管理・監督と重要な意志決定。そこで決まった方針の下、具体的な執行にあたるのが、学長をはじめとする大学執行部です。理事と学長が担っている役割は本来、異なるわけです。 たとえば大学に所属する学生や教職員が不祥事を起こした場合、仮に学長や事務局などの執行部が、大学に都合の悪い情報を隠したがっていたとしましょう。そんなとき、学園が背負っている社会的な責任や学園全体に与える影響などに鑑み、より高い視点で、問題の解明や社会への説明責任を果たすよう命ずることができるのが理事会です。もちろん理事たちにも色々な考えはあるでしょうが、執行部と異なる立場で議論できる仕組みを持つことは、学校法人が社会に対して責任を果たしていく上で非常に大切です。 このように両者は緊張感のある関係性で、役割分担を行うべきとされています。しかし実際には、日本の多くの大学で学長や学部長などの教職員が理事を兼任しており、監督役と執行役が明確に分かれているとは言えない状況です。日大もそうですね。 平時はそれでも良いでしょう。しかし不祥事が起きた際、必要な処分を下すべきときに下せない、組織風土を変えられないなどの機能不全に陥ることもあります。報道を見る限り、今回の日大は、まさにそのような課題を抱えているように思えます。重要な情報がトップに上がってこなかったり、理事会のメンバーも一緒になって不祥事を隠そうとしてしまったり。このあたりにガバナンスの課題があるのではないでしょうか。 健全に問題解決ができる大学もあるとは思いますが、不祥事が起きた際、日大のようにガバナンスの混乱が起きうる大学は他にもあるかもしれません。
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