攻めすぎた「山下美夢有」と静かに攻めた「リディア・コー」 五輪女子ゴルフのデッドヒートを制したポイントとは
「ハッピーな気持ちで戦うことができた」
音もなく天まで昇っていったコーの最高の戦いぶりには、銀メダルを獲得したヘンゼライトも銅メダルを手に入れたリン・シユも、そしてメダルを逃した山下も及ばなかった。 2016年リオ五輪で銀メダル、2021年東京五輪では銅メダルを獲ったコーは、パリ五輪で悲願の金メダルを手に入れ、「私がゴールドメダリストになったなんて……大勢のみなさんが支えてくれたからこそ、私はハッピーな気持ちでパリ五輪を戦うことができた。ありがとう」。表彰台に立ち、ニュージーランドの国歌を聞いたときは、涙が溢れて止まらなくなった。 金銀銅のメダルをすべて手に入れる偉業は「今後、2度と達成されないのでは?」と米メディアは口を揃える。 この金メダル獲得によって、史上最年少のゴルフ殿堂入りも決まり、「これ以上は何も望まない」と言ったコーの幸せそうな表情が、眺めていた世界中の人々に笑顔を運んだ。 そんなパリ五輪の女子ゴルフは、文字通りのハッピーエンドだった。
舩越園子(ふなこし・そのこ) ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。 デイリー新潮編集部
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