攻めすぎた「山下美夢有」と静かに攻めた「リディア・コー」 五輪女子ゴルフのデッドヒートを制したポイントとは
「メダルを獲りに行く」という強い意志
パリ五輪の女子ゴルフ最終日は、男子の最終日と同様、手に汗握る展開になった。 【写真】「この悔しさを忘れずに…」4年後の出場を目指す山下、チームジャパンとの集合写真ではとびきりの笑顔!
最終日を通算9アンダーの首位タイで迎えたのは、ニュージーランドのリディア・コーとスイスのモーガン・メトロー。そして、日本の山下美夢有と米国のローズ・チャンが2打差の通算7アンダー、3位タイで追いかける形で最終ラウンドが始まった。 首位タイの2人は、出だしから波乱に見舞われた。メトローは第1打をいきなり池に落としてボギー発進。メトローとともに最終組でスタートしたコーも、いきなりのボギー発進。一方、1つ前の組でスタートした山下は2番でバーディーを先行させ、その時点でメトロー、コー、山下の3人が首位に並んだ。 メトローはいきなりの池ポチャで焦りが隠せない様子だったが、百戦錬磨のコーは、メトローとは対照的に冷静さを保ち、着実にフェアウェイとグリーンを捉え、好機到来を待って、バーディーを重ねていった。 山下のメダル獲得を切望していた日本のファンの期待は、このとき一気に高まったはずである。そして、山下自身の表情にも「やれそうだ」「行けそうだ」という確信めいたものが見て取れ、「必ずメダルを獲りに行く」という強い意志も伝わってきた。
山下の「怖れを知らない攻め方」
ゴルフに「絶対」という言葉はなく、どう攻めるべきかの正解もない。しかし、メダルを獲ろうとアグレッシブな攻めに出た山下のこの日のゴルフは、攻めすぎたからこそ、メダルから遠ざかったのではないかと、そう思えてならない。 2番でバーディーを先行させ、首位に並んだ山下は「怖れを知らない攻め方」をしていた。しかし、その「攻め」が、結果的に彼女のボールをラフに入れ、6番でも7番でもボギーにつながった。 8番で奪い返したところは、ガッツある山下ならではの立ち直りだったが、9番(パー5)では、2打目でグリーン際まで運びながらも、ボールはここでも深いラフの中。3打目のチップショットでグリーンをオーバーさせると、4打目はグリーンには乗せたものの、長いパーパットが残った。ミスにミスを重ねた末に3パットしてダブルボギー。 そんな彼女の戦い方には、このときばかりは丁寧さや慎重さが欠けてしまっていた。そうなってしまったことは、メダルを獲りたい一心で前のめりになっていたからではないかと私は思う。