攻めすぎた「山下美夢有」と静かに攻めた「リディア・コー」 五輪女子ゴルフのデッドヒートを制したポイントとは
後半16番のダブルボギーが致命傷に
それでも気持ちを切らさず、10番、11番でバーディーチャンスに付けたところには、日本の賞金女王の意地とプライドが見て取れた。しかし、バーディーパットを沈めることはできなかった。 それでもなお攻めの一手だった山下が14番、15番で連続バーディーを奪ったところには、彼女の底力を見た思いがして感嘆させられた。 悔やまれるのは、せっかくメダル圏内の通算7アンダーとして迎えた16番(パー3)で池に落としたこと。終盤で喫したこのダブルボギーは、挽回の猶予が残り2ホールしかないという意味では、あまりにも手痛いミスだった。 最終ホールの18番(パー5)で「イーグルを獲れば」という小さな望みは残されていたが、2オンには成功したものの、バーディー・フィニッシュとなった山下は通算6アンダー、4位タイ。 終わってみれば、攻めすぎて何度もラフにつかまった前半の2つのボギーと9番のダブルボギーがボディーブローのようにじわじわと効いてきて、後半16番のダブルボギーが致命傷になったという印象が残った。 だからと言って、守っているだけではメダルを獲ることができなかったことも事実だ。それならば、どうすれば良かったのだろか。
誰よりも「いい攻め」をしていたコー
激戦を制し、金メダルを獲得したニュージーランドのコーは、最終日の出だしでボギーを喫したものの、動揺した様子は皆無で淡々とプレーを続けていた。 ときおり笑顔を交える彼女の表情、終始、ルーティーンを守り通す彼女の仕草からは、メダルを獲りに行こうというガツガツした雰囲気は感じられず、「攻めのゴルフ」という印象を受けることもなかった。 だが、着実にフェアウェイとグリーンを捉え、徹底してラフやバンカーを避けていくショット力は存分に見て取れた。その技術力をプレッシャーがかかる最終日にきっちりと発揮できるだけの精神力も持ち合わせていた。 彼女のゴルフは、一見すると積極的に攻めているようには見えなかったものの、実際は誰よりも「いい攻め」をしていたのではないだろうか。 それでも「ゴルフにミスはつきもの」とは、よく言ったもので、首位を走っていたコーも13番では池につかまり、ダブルボギーを叩いた。そうこうしているうちに、ドイツのエスター・ヘンゼライトが猛チャージをかけ、いつしか、コーに1打差まで迫ってきた。 一時は2位以下を5打も引き離していたコーだが、13番以降は1打差を必死に守る苦しいゴルフを強いられた。 そうなったとき、大きくモノを言ったのは、パーパットを確実にカップに沈めていったコーの瀬戸際のパット力だった。その力は、イーグルやバーディーを獲りにいく前のめりのパット力とは異なり、粛々とスコアを維持向上させるための「静かなる攻め」「密かなる攻め」、そして「最高の攻め」だった。