脳科学者が語る「誰もが“老害”になる」悲しき必然 自分もすでに「老害脳」化が始まっているかもしれない
もし仮に、自分の行動の99%に「老害」感がなくても、残りの1%で「老害」が感じられたら、それは相手に強烈な印象を残してしまうかもしれません。そうすると、他の全ての言動も、その言動をした自分自身までも「老害」と思われてしまうのでは? 実は、私自身は医師として、生まれたばかりの赤ちゃんから、ビジネスパーソン、さらには100歳を超えた超高齢者まで、どんな年齢層の人とも気さくに話せることを特技としてきました。
しかし、決して若い人に偉ぶらないように、十分気をつけているつもりでも、知らないうちに余計なことを口走り、嫌な思いをさせてしまっているかもしれない──。こう考え始めると、何とも悲しく、いたたまれない思いになってしまうのです。 「老害」には誰もが陥る可能性があります。年齢を重ねるうちに、知らず知らずのうちに脳の機能が変化し、なってしまうものなのです。 そう考えると、「老害」と呼ばれる人の中には、心から他人の役に立ちたいと思って行動している人もいるかもしれません。
若い人のために尽力したいと願っているのに、「老害」として忌み嫌われる存在になっている可能性があるなんて……。それがもし自分のことだったらと思うと、たまりません。 そんなことを考えてしまいます。 脳の仕組みを理解し、「老害脳」を克服すれば、社会全体が豊かになる 「老害」の被害に苦しんでいる人と、心から人の役に立ちたいと思っているのに「老害」と見なされてしまう人(もちろん、その両方の側面をもつ人もいるでしょう)の思いを、うまく汲み取って関係を調和できないものでしょうか?
■超高齢化社会の日本で「老害」が増える背景 ただでさえ、日本は超高齢化社会です。年齢に関わりなく、働きたい人ができるだけいい仕事をし、他人の役に立ちながら、充実したいい人生を送れるかどうかは、日本全体の課題と言えるでしょう。 もしも「老害」という問題が、そうした理想を阻んでいるのであれば、また「老害」が、若い世代の活動を萎縮させ、中年以降の人々の脳の老化を加速させていくだけなのだとしたら、これはぜひ、脳科学者としてなんとかしなければならないと思うのです。