大いなる山 Mt.デナリ・カシンリッジへの挑戦 高度順応編|#4
大いなる山 Mt.デナリ・カシンリッジへの挑戦 高度順応編|#4
北米大陸最高峰、デナリ(標高6、190m)。7大陸最高峰のひとつに数えられ、その難易度はエベレスト登山より高いという声もある。 高所登山としての難しさだけでなく、自身による荷揚げ(ポーター不在)、トレイルヘッドからの比高の高さ、北極圏に近い環境など、複合的要素が絡み、登頂成功率(※2023年度)は30%前後。 そんなデナリへ初めて挑んだ、山岳ガイドの山行を振り返る。 \ #3はこちら / 。
Day2 スキーヒル・C1~C2
7時に起きて外のようすを伺うと、小雪が舞っていた。ガスで遠くまで見通すことはできないが、視界が閉ざされるほどではない。温かいソーメンを食べてゆっくり10時に出発する。今日の目的地はC2(2、900m)を飛ばしてC3(3、400m)まで。 すぐ目の前にあるスキーヒルと呼ばれる斜面に取付く。昨日は平坦に近い緩やかな氷河であったが、ここからは傾斜が増す。文字どおりスキーで滑ったら気持ちよさそうな斜面であるが、登山者にとってはきつい登りで、引きずっているソリが何倍も重く感じられる。 喘ぎながら登っていくと、次第に天候は悪化し始めて雪も強まり、周囲がガスに覆われ始めた。 先行者のトレースが消えていくので、およそ50m間隔に刺されたたワンド(竹竿)を目当てに進む。時間が経つにつれ雪とガスで次のワンドを見つけるのが難しくなってきた。ソリが軽くなったことで傾斜が緩んだことを知り、C2近くまで来ていることがわかった。スキーヒルを登り切ったところで吹雪の様相となった。 C2付近は平坦で、幅数キロもある氷河。そのため先が見とおせないとどちらにいってよいまったくわからなくなる。先行していたフランスパーティに追いつくと彼らも迷っているらしく、「あなたたちについていっていい? 」なんて頼られる始末。なんとか進もうと試みるもクレバスが怖いので、この日はここで泊まることとした。 夕方まで風雪が強かったが、夜には落ち着いた。気温は思いのほか低くなく温かく感じる。予報によれば明日の天候は朝には晴れ間が見えそうとのこと。 天気予報はインリーチという通信機能をもったGPSを使った。簡単な天気予報を受信できるし、詳細な予報は日本の家族からショートメッセージで確認できる。非常時にはボタンひとつで救助要請までできる優れものだ。デナリ登山では同様の通信機器の携帯義務がある。 明日は朝から回復傾向。できれば見とおしの効くなかで歩きたいものだ。